浪越式健康長寿の五原則2009/06/04 10:21

元全日本指圧協会会長浪腰徳次郎氏 (1905 年 - 2000 年) は香川県の生まれで、昭和 24 (1954) 年に来日したマリリン・モンロウに計 7 回指圧をした事から一躍脚光を浴びたが、「指圧の心は母心、圧せば命の泉湧く」 の決め台詞でも一世を風靡したものです。

浪腰氏は健康で長生きするための秘訣として、次の 5 つを挙げています。

(1) 快食 : 食事は規則的で適量を、ゆっくり咀嚼して味わう。 消化器系には迷走神経が通じており、精神的なストレスは胃腸障害を惹き起し易いので、心理的な要因を疎かにしない事。 落着いた環境で、ゆったり寛げる雰囲気で、会話を楽しみながら食事は摂るべし。

(2) 快眠 : 早寝早起をし、早朝の清新な大気を深く吸い込み、一日の活動を新鮮な気持で迎える。

(3) 快通 : バランスの取れた、腹八分目の適量の食事で、便秘をしない様に心掛ける。 お腹に手の平を重ねて乗せ、時計回りに撫でてやると便秘の予防に良い。

(4) 快働 : Walking など、適度の運動により身体を動かす (「一日一万歩」 は良く言われているメタボリックシンドロームを予防する健康法の一つですね)。

(5) 快笑 : 笑うと、横隔膜が上下運動を起し、心臓の働きを賦活し、血行を良くします。 結果として、胃腸の機能を促進し、また、内分泌の働きを高めるのです。 「一笑一若、一怒一老」 とは良く言ったものです。

体液量と水分のバランス2009/06/10 09:50

人間の体液量は体重の約 60% (略 36 L) と言われており、健康成人の体液量は常にほぼ一定している。 何故なら、脳が身体に指令を発して体内に取り込んだ水分量と、それに見合う同量の水分を対外に排泄して体液量の平衡を保っているからである。

健康人の 1 日の水分交換量は以下に示す如く、通常 2.5 L である。

    < 摂取 >...........................................< 排泄 >
飲料水................1,300 ml.................尿...............................1,500 ml
食品中水分..........900 ml.................皮膚からの蒸発..........500 ml
酸化水...................300 ml.................呼気...............................400 ml
...............................................................糞便..............................100 ml
--------------------------------------------------
(合計)..................2,500 ml.....................................................2,500 ml

一方、血液量は、体重の 1/13 (約 8%、凡そ 5 L 弱) と言われており、その内、赤血球、白血球、血小板等の細胞成分が 40 - 45% で、 残りの 55 - 60% は血漿と言われる液体成分である。

血液は、酸素は勿論、一酸化炭素や老廃物等の物質の運搬を行うほか、内部環境の恒常性の維持、身体の防御、止血等、その働きは多様である。

体液量が平衡を保てなくなると、当然、血液の働きにも支障が生じる。 東洋医学では、総ての病気は 「心身のストレス」 に起因するものとされており、心身のストレスが気や血液の滞り (「気滞」 や 「血滞」 と言う) を齎し、それが痛みや凝りとなって身体表面に現れて来ると考えている。

高齢になると、体液量が減少して来るので、病気に罹り易くなるのである。 従って、水分の摂取やストレスマネジメントに留意する事が健康維持に大切になってくる訳である。

暑い夏の季節を迎えるこれからは、一度に沢山の水分を飲むのではなく、適量をこまめに摂り、熱中症や脳梗塞などを惹起こす原因となる脱水症状の予防に努めると良い。

灸は身を灼くにあらず 心に燈を點すなり2009/06/14 10:44

今回は何時もと一寸趣向が変るが、6/9 (火) の NHK 「プロフェッショナル - 仕事の流儀」の番組を見て感じた事を述べてみたい。
 
この日の放送は、日本屈指の乳腺外科医である中村清吾医師の「人となり」に迫る感動的な番組であった。

以下、番組を見ていない方の為に、NHK のブログから引用すると、中村医師は、東京浅草で生まれ育った。 町で名を知られた鍼灸師だった父上は、何時も患者さんたちの愚痴や悩みを聴きながら、時には厳しく、時には優しく応対しておられたそうだ。 そんな父上の後姿を見て、中村医師は医道を志したのだと言う。

外科の道に進んだ中村医師は、何時しか病気を「治す」事にばかり目を向ける様になってしまい、患者さんの「声」に真摯に耳を傾ける姿勢を忘れてしまっていた。 そんな時、幼子を連れた再発患者さんが中村医師を頼ってやって来たのである。 「一日でも長く生かせてあげたい」と中村医師は願う。 然し、抗癌剤を次々に投与しても効き目はなく、副作用の厳しさばかりが彼女を襲った。 そして彼女は「子どもの世話をしたい」と言いつつ、苦しみながら息を引き取ってしまう。

中村医師は、「自分のやり方は本当に正しかったのか」と、深く悩むようになる。 悩む中、彼は乳癌剤治療の先進国、米国での研修を希望し、ここで患者さんを沢山の専門家で共に診るチーム医療を知るのである。 彼らは治療だけではなく、患者さんのその後の生活まで見据えて相談に乗っている。 帰国した中村医師は、時間を掛けながら同僚を説得、2005 年、遂にチーム医療を本格的にスタートさせたのである。

「白衣を着ていると、”先生” と思われるかもしれないけれど、それに溺れてはいけない。 もっと謙虚でないと」と彼は言う。 「謙虚さを喪うと、医師としての成長は止まってしまう」とも考えている。

そんな中村医師が外科医の道を志した時から座右の銘としている言葉があると言う。 それは鍼灸師だった父上が扇子に書き記した言葉で「灸は身を灼くにあらず 心に燈を點すなり」である。

確か、これと良く似た主旨のことを昭和の名灸師として慕われた深谷伊三郎氏も言っておられたのを想い出した。

が、この言葉でもう一つ想い出したのが、今でも名君と評される上杉鷹山を描いた藤沢周平の小説「漆の実のみのる国」であった。

上杉鷹山は藩主の座を退く際に「伝国之辞」を次の藩主に遺しており、”国家人民の為に立たる君にて、君の為に立たる国家人民には無之候” と言う有名な言葉が書かれている。 鷹山の素晴らしさは、藩政改革を推し進め、崩壊目前の藩財政を見事再建した事は勿論だが、何よりも、人々の心に「愛の火種」を植え付けて行った点にある。

「心に燈を點す」と言う中村医師の父上のこの言葉も意味する処は同じである。 私自身臨床に携わる一鍼灸師として、患者さんの心に「愛の火種」を點せられるか否か、一日でも早く深谷伊三郎氏や中村医師の域に一歩でも二歩でも近付きたい、と想いを新たにした次第である。

横井 也有に学ぶ 「健康十訓」2009/06/25 15:31

横井 也有は, 赤穂浪士が討入りした元禄 15 年 (1702 年) 尾張に生まれ, 禄千石の御用人で大番頭を兼ねる重臣として責務を果すが, 早くから隠遁の志があり 53 歳で引退した. 江戸時代後期の俳人でもあり, 与謝蕪村と略同時代に活躍, 「鶉衣」 を著した. その一首 「化物の正体見たり枯尾花」 は良く知られている. その彼が次の様な 「健康十訓」 を遺している. これが, 300 年程前に作ったとは思えないほど, 今の時代にもぴったりの健康法なのです. 耳が痛くなる人は沢山いるのではないでしょうか?

(1) 少肉多菜 : お肉はほどほどにして, 野菜も沢山食べましょう.
(2) 少塩多酢 : 塩分控え目で, 酢の物をたっぷりと.
(3) 少糖多果 : 甘い物ものより, 果物を.
(4) 少食多齟 : 腹は八分目の量を良く噛んで.
(5) 少衣多浴 : 薄着になって, 太陽を浴び, お風呂に入って新陳代謝を高めよう.
(6) 少車多歩 : 車に乗らずに, 先ず歩く.
(7) 少煩多眠 : くよくよしせずに, ぐっすり眠る.
(8) 少念多笑 : 笑いは憤りを吹き飛ばす.
(9) 少言多行 : ウダウダ文句ばかり言わずに, 先ず行動する.
(10) 少欲多施 : 私利私欲に捉われず, 他人に施しを行い, 慈しみの心を育て, 心豊かな生活を送る.