養生訓を読む (3)2009/12/07 04:37

凡そ薬と鍼灸を用るは, 止む事を得ざる下策なり. 飲食, 色慾を慎み, 起臥を時にして, 養生を良くすれば病なし. 腹中の痞満して食気つかゆる (痞える) 人も, 朝夕歩行し身を労働して, 久坐久臥を禁ぜば, 薬と針灸とを用ひずして, 痞塞の憂ひなかるべし. 是上策となす. 薬は皆気の偏りなり. 参芪朮甘 (ジンギジュツカン, 薬用人参のこと) の上薬と謂へども, 其病に応ぜざれば害あり. 況や中下の薬は, 元気を損じ, 他病を生ず. 鍼は瀉あり手補なし. 病に応ぜざれば元気を減らす. 灸もその病に応ぜざるに妄 (ミダリ) に灸すれば, 元気を減らし気を上す. 薬と針灸と, 損益ある事かくの如し. 止む事を得ざるに非ずんば, 鍼, 灸, 薬を用ゆべからず. 只, 保生の術を頼むべし. [巻第一 (15)]

これも主旨はお判りと思う.

病気になってから, 薬や鍼灸に頼ろうとするのは最も下手なやり方で、養生第一に努めれば病気になどは罹らないものだ.

薬はどんな名薬と謂えども身体に害を及ぼすものだし, 鍼灸も正しく施術を行わねば, 気を整える処か, 却って精気を奪ってしまう事にもなり兼ねない, と言っている. 

病気にならないのが一番望ましい事であるのは言を俟たない. その為の 「養生」 なのであるが、人間意外とこれを実践出来ず, 病気になって初めて健康の有難さを実感するのである.

甲の薬は乙の毒, と言う諺があるが, 漢方薬 (生薬) と言えども, 基本的には人間の身体に害 (副作用) を及ぼす可能性は否定出来ない.訳である.

人間の身体は誠に神秘的で, 人によって感受性が異なっている. 実際に患者さんを診ていると, 鍼よりも灸の方が効く人もいれば, 鍼の方が効く人もいる.

また, 同じ刺激量を与えても, 直ちに効果の出る人もいれば, 或る程度時間が経過してから出る人もいる.

益軒は, この辺りの機微を良く弁えていた事を窺える記述であると思う.
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
http://www.ne.jp/asahi/shinqma/tommy/index.html

(なお, 診療予約時、「健康小話」 を読んだ, と言って戴いた患者さんは,
初診料が半額になります.)

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