橋爪 謙一郎著 「エンバーマー」 (祥伝社) から2010/06/20 20:38

「エンバーミング」 と言う言葉を知っている人はそう多くは居ないと思うが, 故人が病気などで失われた “その人らしさ” を取り戻し安らかな顏や姿に戻すための処置を (施す事を) 言う. 

従って, 「エンバーマー」 とはその様な処置を施す人を指す.

Embalm とは, (死体) を防腐して保存する, (名を) 長く記憶にとどめる, 芳香を漂わせる, などの意味で, Balm とは 香油を意味する言葉である.

フランシス・コッポラ監督の 「ゴッドファーザー」 と言う映画をご覧になっているだろうか?

ご覧になった方は, ゴッドファーザーの長男が抗争するマフィアに騙されて呼び出され, 機関銃で身体中蜂の巣だらけにされ, 見るに耐えない無残な身体になってしまう. ゴッドファーザーは昔恩義を掛けた葬儀屋を呼んで, 息子の遺体を綺麗に修復させる場面を覚えているに違いない. 

この時, 葬儀屋が行なった処置が 「エンバーミング」 である.

表題の本は, 著者が渡米しその資格を取得するに際し, 体験した事やそれにまつわる想いなどを綴ったものである.

残された家族や親族等に関して, 色々考えさせられる事の多い本であるが, その中に次の様な箇所がある.

「皆さんは, 大切な人を亡くした時, 人目が気になり, 感情を素直に出せなかったりはしませんでしたか? そんな時は, 泣いても喚いてもいいから表に出していいのです. いや, 出した方がいいのです. (中略) 日本では死別による悲しみを内に秘め, 感情を抑えて日々の生活を必死に送る事が美徳とされています. 『死』 に際し, 嘆き, 感情を顕にすることをタブー視する傾向が強い気がします. 葬儀後も独りで苦しんでいる人が多いのではないでしょうか. 誰かに助けを求めたくても, その方法が分からず, 必死に毎日を過している人もまた多い筈です. 感情に蓋をして抑え込むと, それが (ストレスとなって) 身体面に影響し, 精神面にも変調を来します. 内面に仕舞い込んだものを上手く外に出せる様に, 周囲の人々が温かく支え, 受け止めて共感して行く事が大切です」

私の身の回りでも, 愛する大切な人を交通事故などで突然亡くしてしまい, 悲嘆の余りなかなか立ち直れないでいる人を度々目にしている.

これも一種の PTSD (= Post-traumatic Stress Disorder, 心的外傷後ストレス障害) であるが, そのような人の傍に寄り添い, 話をよく聴いて共感し, その人のあるがままの心を受け容れてあげる事がとても大切なのである.
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
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