貝原 益軒の 『養生訓』 を読む (13)2010/06/30 20:51

胃の気とは元気の別名なり. 冲和 (チュウワ) の気也. 病甚しくしても, 胃の気ある人は生く. 胃の気なきは死す. 胃の気の脉とは, 長からず, 短からず, 遅ならず, 数 (サク) ならず, 大ならず, 小ならず, 年に応ずる事, 中和にしてうるはし. 此脉, 名づけて言 (イイ) がたし. ひとり, 心に得べし. 元気衰へざる無病の人の脉膈の如し. 是古人の説なり. 養生の人, つねに此脉あらんことをねがふべし. 養生なく気衰へりたる人は, わかうしても此脉ともし. 是病人なり. 病脉のみ有て, 胃の気の脉なき人は死す. 又, 目に精神ある人は寿 (イノチナガ) し. 精神なき人は夭 (イノチミジカ) し. 病人をみるにも此術を用ゆべし. (巻第二 23)

以前にもこの欄で触れた事があるが, 東洋医学では 「脈診」 と言って, 患者さんの脉状を診て, その人の病位・病情・病勢と言ったものを捉えるのである.

些か専門的になるが, 脈診にも, 三部九候診, 人迎脉口診, 六部定位脈診等, 幾つかある.

六部定位脈診では, 「胃気の脈」 を浮中沈の中の中の部位の脉, 中脈としている. 次指, 中指, 薬指の 3 本を手首に軽く当て, 徐々に押圧して行くと脉に触れる. この時, 指の圧を徐々に強くして行くと, 脉の触れ具合も徐々に強くなる. 更に押圧すると, 脉は, 逆に触れ難くなって行く. この時, 脉が最も強く感じる深さを浮中沈の中の部位と言い, その部の脉を中脈と言うのである.

中脈は 「胃の気」 が反映する脉で, この中脈がしっかりしていれば, 胃の気が整っている事を示し, 生命力がある事を意味する. 

逆に, 中脈が弱かったり異常があれば, 胃の気が整っていない事を意味しており, 生命力が不十分であると看做し, 病の治療が困難であったり, 場合によっては死証とみるのである.

鍼灸治療, 特に 「経絡治療」 では, 施術によって, 脉が中脈に整うことを目指すのである.
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
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