NHK 「クローズアップ現代 - 目指すは “世界最高” iPS 細胞・山中教授に聞く」 を見て - Part (1)2010/07/19 00:27

7/15 (木) NHK 番組 「クローズアップ現代」 で, 「目指すは “世界最高” iPS細胞・山中教授に聞く」 と題する放送をご覧になった方は多いと思う.

4 年前, 世界で初めて 「iPS 細胞」 を作りだした京都大学の山中伸弥教授が, 5 月に開所した世界初の 「iPS 細胞」 専門の研究施設 「京都大学 iPS 細胞研究所」 所長に就任したの機に, 国谷キャスターが山中教授にインタビューを試みた番組である.

「iPS 細胞」 とは, 皮膚など身体の細胞を一旦 “リセット” することで、あらゆる組織や臓器に変わる “万能性” をもった細胞で、「再生医療」 の切り札として注目されているだけでなく, 様々な病気の解明や, 難病の治療薬開発などに使えるとして, 世界中の研究者や製薬メーカーが今この iPS 研究に雪崩を打っている.

激化する国際競争のなかで, 日本はどう研究をリードし, 逸早く臨床応用を実現させるのか, インタビューを通して, 新たな研究所が映し出す生命科学の未来を展望しており, なかなか興味深い番組であった.

iPS 細胞の臨床への応用が実現すれば, 様々な難病の治療に明るい展望が開けるものだけに, 山中教授の研究所長としての手腕には誰しも大いに期待を寄せるものがある.

事業仕分けで一躍人気を得て, ダントツのトップ当選を果した蓮舫サンではないが, それこそ 「世界一」 を目指して頑張って欲しい. 

山中教授の発言の主旨は以下の通り.

1) 研究所について
iPS 細胞に関しては 「最高レベル」 とかではなくて, 本当に 「最高のもの」 にしたい. みんな世界中の人がここの存在を知っていて, iPS と言えば, この CiRA (サイラ) 京大の iPS 研究所がまず頭に浮かぶ, とそう言う様な研究所に何とかしたい.

2) 知的財産の重要性について
知財と言うのは非常に大切で, 例えば, 非常に多くの知財をある民間企業が独占してしまったりすると, その会社は自由に研究できるが, 他の会社は研究出来ない事になる.

そうなると研究者が少ないと, 研究のスピードも遅くなるし, その会社が興味を持った研究しか出来なと言う事になってしまう.

それ故, 知財部を作って知財を大事にしようと思うのは, 決して京都大学が知財を独占して, 京大だけで実験をしようという意図は全くない.

私たちは最終的なゴールである患者さんの所に, 薬なり細胞なりを一日も早く持っていくためには, こういう京都大学という公的な機関が大切な知財をきちっと抑えて, 色んなところにノンエクスクルシブ (非独占的な) ライセンスをして, 幅広く使って貰う. それが研究を進めるうえで一番いいことだと思います.

今までのように, 論文を書くのがゴールの研究と, それから知的財産を育てるというか, 知的財産を獲得するための研究とは, 実は大分違ってルールも異なる.

研究者が判らないルールも一杯あり, そうなってくると, その部分に精通した人と, やはり手をしっかり結ばないと駄目です.

今の状況はもう, 一人のスーパースターが何かできるという状態ではなくて, 沢山の人が集まって, 初めて競争力が高まって成果も出ると言う様に変っている.
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NHK 「クローズアップ現代 - 目指すは “世界最高” iPS 細胞・山中教授に聞く」 を見て - Part (2)2010/07/19 21:30

3) 国際競争について
研究ですから, 誰もが思いつくようなことを早くやるという競争もあるんですが, 残念ながらそのタイプの競争は日本は弱いです.

ただ, それ以外で, iPS 細胞にしても, 普通だと思いも寄らないような, 色んな使い方があったり, 研究の内容があったりして, それはまた別の意味の競争, アイデアの競争で, そこの処は日本人は強い.

アイデアと言うのは別にお金があったら出てくるとか, 人が一杯いたら出てくるというのではない.

ただ, 間違いなく言える事は, アイデアは若い方が出易い. そういう折角若い人が出したアイデアを, そんなの駄目だよとか, そんなの面白くないよ, と言ってしまうと終りなので, それをいかに邪魔をしないか.

だから早く若い人が自分のアイデアを自分で出来るような環境にしないといけない. そういう意味もあってできるだけ若い部隊を沢山作りたいと思っています.

4) 難病治療について
難病の患者さんというのはある意味, 自分たちはもう見捨てられていると言うか, 患者さんの数が少ないだけに, 研究している人も少ない.

また製薬企業等も患者さんが少ないですから, そこに多額の研究費を注ぎ込む訳が無い. だから, 自分が病気であること自身も辛いんですが, それ以上に, 誰も研究さえして貰っていないと. 患者さんと接するようになって, 凄くそう感じるようになりまして.

特に難病というのは 1 つの遺伝子の異常で起っている場合も多いですから, それは iPS 細胞が一番力が発揮できるところです.

5) 山中教授の原動力
色々ありますが, 僕はやっぱり自分自身が短い期間ではありましたが, 臨床医だったと言うのが非常に大きい.

やはり最後は役に立ちたいと. 医者であることを忘れたくないとは思っていましたから.

ただ, 基礎研究, ある 1 つの基礎研究 1 人の人ができる基礎研究で, 本当に新しい治療法ができたりするのは, そんなに簡単じゃない. そんな甘いもんじゃないっていうのも非常に良く解っています.

然しその中で, 幸運にもこういう iPS 細胞という技術に僕たちのグループが出会ったって言うのは, もうこれは幸運以外の何ものでもない. これをやっぱりきちっと, まだ全然役に立ってないですから, 役に立つところに持っていくというのは, この技術に出会ってしまった私たちの義務以外の何ものでもない.

楽しみでもあるんですけれども, 義務でもあると思いますから, これはもう本当に何とか出来るとこまで必死でやろうというのが, 私とか一緒に研究をやっている者の想いだと思います.

6) 総合力で世界一に
これは足し算じゃなくて掛け算なんです. 足し算だと, どれかがゼロ点でも, 他がよかっったら, 足したら凄く合計点良くなります.

然しこれ, 掛け算ですから一つでもゼロがあると, 他がナンボ良くてもゼロになってしまって, 結局患者さんのところには行かない.

だから僕たちはゼロを如何失くすかが重要. この研究所の中で, 総て万遍無く 1 とはいかなくても, 0.5 とか, 0.8 とか総合力でここを世界一にしたいと.

総合力で世界一.

それぞれでも頑張りたいですけれども, それぞれだったら, もう研究に特化するところとか細胞のバンクに特化しているところとか, 色んな専門の機関が世界中にあります.

それぞれだったらなかなかそれはちょっと難しい. 世界一とはちょっと言いきれなくて, 世界トップクラスとか, 一寸お茶を濁したくなるんですが, 僕たちとしては総合力としてはここでしか出来ないと言うものを作りたい.

番組からは, 世界におけるこの分野の競争が如何に熾烈極まりないものか, が容易に想像できる.

また, 研究所長としての山中教授の姿勢・発言は, 極めて Fair で, 然も, 頼もしいものを強く感じた. なかなか感動的な番組であったと思うのである.
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