やぶ蚊に刺されても何故痛くはないのか?2010/07/06 20:31

「ライトニックス」 は, 兵庫県西宮市にあるベンチャー企業である. 医療器具メーカーに勤めていた福田光雄氏が青柳誠司関西大学教授の助言を受けて 2002 年に創業した医療器具メーカーである.

健康診断には欠かせない採血検査だが, 針が腕に刺さればチクリとした痛みが避けられない. そこで, ライトニックスは痛くない採血針の開発に挑んできたのである. その成果が報われて, 痛くない採血針が現場で使われる様になる日はもう直ぐそこまで来ていると聞いている.

既にやぶ蚊が飛び廻る季節を迎えているが, やぶ蚊に刺されて血を吸われても 「痛い」 と感じることは先ずあり得ない.

顕微鏡で良く見ると, 蚊の針には, ギザギザした微細構造が針の表面には付いていて, これが点として体内に接して抵抗を抑える為, 皮膚の表面に存在する 「痛点」 と呼ばれる痛みのスイッチに接触し難くするからである.

鍼灸師が用いる鍼の多くは, 160 – 200 μと, 採血針や注射針に較べると遥かに細いのだが, 鍼が皮膚に突き刺さる瞬間の痛み (これを 「切皮痛」 と言う) は, 或る意味, 完璧には「避けられない」. 採血針に続いて, 鍼灸師が用いる鍼にもこの技術が適用される事を願うものである.

そうすれば, 「鍼は痛いのでは?」 と言う患者さんの謂れなき心配も, 早晩払拭出来るのではないかと思うからである.
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
http://www.ne.jp/asahi/shinqma/tommy/index.html
(なお, 診療予約時、「健康小話」 を読んだ, と言って戴いた患者さんは,
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貝原 益軒の 『養生訓』 を読む (14)2010/07/08 20:46

凡そ事十分によからん事を求むれば, わが心のわづらひとなりて, 楽なし. 禍も是よりおこる. 又, 人の我に十分によからん事を求めて, 人の足らざるを怒りとがむれば, こころのわづらひとなる. 又, 日用の飲食, 衣服, 器物, 家居, 草木の品々も, 皆美をこのむべからず. いささかよければ事足りぬ. 十分によからん事を好むべからず. 是皆, わが気を養なふ工夫なり. (巻第二 36)

ここでは, 何事に付け, 完全無欠を求めてはいけない. 完璧を求めると, 自分の心の負担となってしまい, 楽しみがなくなってしまう, と益軒は説いている. 心の健康論ないしは益軒の人生観を知ることが出来る.

徒でさえ, 厳しいストレス社会に生きている現代人, 特に, 中間管理職にある働き盛りの年代層で鬱病を発症する人が少なくない. 然も, 性格的に几帳面で真面目な人ほど, 鬱病になり易いと言われている.

以前、この欄で関西医科大学心療内科中井吉英教授の 「精神の健康を保つ秘訣」 を紹介したが (詳細は Back Number を参照), 何事も完璧主義を貫こうとすると, 普通の人は精神的に疲れ切ってしまうのである.

Case by Case ではあろうが, 中庸と言うと少し古いかもしれないが, “ほどほど” を以って先ずはよしとする事もまた “生活の知恵” であり, 重要な事なのである.
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介護 12 年の記録 「逝かない身体」 山口 由美子著 (医学書院) から2010/07/09 21:43

既にお読みになった方が沢山いらっしゃると思うが, この程, 標記の本が大宅惣一ノンフクション賞を受賞した.

この本は ALS (禁萎縮性側策硬化症) と言う難病を発症した著者の母親を 12 年に亘って介護した記録を纏めたものである.

ALS の患者さんについては, 過日, 本欄の 「NHK スペシャル 『命をめぐる対話』 から」 でも取り上げているが, ALS は徐々に身体の筋肉が動かなくなり, 自力での呼吸も困難になってしまう残酷な難病で, 患者は人工呼吸器をつけて呼吸をし, 意思を伝えるためには, 眼球で文字盤を指して行なう様になる.

著者は, 夫の仕事で英国に駐在していた 1995 年に母親の発症を知り, 2 人の子どもを連れて直ぐに帰国. 間もなく母親は動かなくなり, 声も失ない, 著者は, 呼吸器を付けての在宅介護を択んだが, 介護の苦労は想像を絶した事が記録から読み取れる.

最後には残された眼球さえも動かせなくなり, 言葉 (文字) による意思の疎通は不可能になってしまう. 然し, 著者は, 血圧や顏色, 涙などから母親の心の内を察するのである.

そして, 「皮膚の下にある細胞の一つ一つは生きている」 事を実感し, 命ある限り懸命に生きようとする母親の姿から, 著者は多くのことを学ぶのであるが, 時には或る種の感動さえ覚えるのである.

例えば, 「ここからは簡単だった. 患者を一方的に哀れむのをやめて, ただ一緒にいられることを尊び, その魂の器である身体を温室に見立てて, 蘭の花を育てるように大事に守ればよいのである」 と言う感動的な一節がある.

著者が母親から教えられたと同じ様に, 読者である我々もまた教えられる事が多いのである. 是非, 一度読んでみて戴きたい本の一冊である.

そう言った自分の経験から, 著者は, 周囲の助けを得られずに, 自宅での介護に悩む家族の力になりたいと, 介護の人材派遣会社を設立し, 家族からの相談に乗る特定非営利活動法人 (NPO 法人) を設立している.

高度に発達した現代医学といえども, まだまだ治療法の目処さえ立っていない難病・奇病が沢山ある.

鳩山内閣が人気取りで行なった, 子ども手当てや高校の教科書無償化等のばら撒き政策も賛否両論があるが, 政治はこのような日の当らない社会の蔭の部分をもっと掘り起こして, 適切な施策を講じて行く必要があると思うのである.
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統合失調症2010/07/10 21:33

今日の日経夕刊に, 統合失調症に関する記事が載っていた.

愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 (同県春日井市) によると, 「統合失調症に関る脳内の蛋白質の働きを解明した」 との由. 新しい治療法の開発に役立つ可能性があるとしている.

統合失調症は幻覚や妄想を症状とする精神疾患で 100 人に 1 人の割合で発症.

神経伝達物質の分泌異常などが原因とされてきたが, 発症メカニズムは分かっていない. 同研究所は, 脳の神経細胞間で情報をやりとりする 「シナプス」 にある蛋白質 「ディスビンディン - 1」 に着目.

発症への関与が指摘されながら詳しい働きは未解明だったが, マウスの神経細胞を使った実験で, この蛋白質の量を減らすと, シナプスで情報を受け取る組織が, 正常に発達しないことが判明. この蛋白質を補充すると組織の機能が回復することも判ったと言う.

この記事で私が意外に感じたのは 100 人に 1 人の割合で統合失調症に罹る人がいると言う事実である.

病院への外来で一番多いのは 「精神疾患に関る」 患者さんだと言う事は知っていたが, 人口の 1% 相当の人が統合失調症を患っていると言う事実には驚きである. 心身症や鬱病患者などを含めると, 何らかの精神疾患を患っている患者さんはもっと多いと言う事になるからである.

更に, これに関連して, 7/8 付日経夕刊では厚労省が高知県と三重県の中高 73 校で, 中 1 から高 3 の男女約 18 千人にアンケートを実施, 回答率 93% の結果から, 全体の 13.8% の生徒が 「誰かに後をつけられていると感じた事がある」 「他の人には聞こえない声が聞こえる」 と言った弱い幻覚や妄想を経験したと回答しているとの由.

思春期に弱い幻覚や妄想を経験すると, 将来, 統合失調症などの精神疾患のリスクが高まるとの海外の報告があるとの事である. 

正直, この記事の数字の高さにも驚きを禁じ得ない.

現代社会は, 高ストレス社会とは言われているものの, こんなにも精神に不調を訴えている人が多いとは由々しき問題と言わねばならない.

以前, 本欄 (健康小話) で紹介した 「精神の健康を保つ秘訣」 を参照して戴きたいが, ストレスと上手く付き合う方法をそれぞれが身に付けて欲しいものだと思っている.
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貝原 益軒の 『養生訓』 を読む (15)2010/07/11 23:00

聖人ややもすれば楽をとき玉ふ. わが愚を以て聖心おしはかりがたしといへども, 楽しみは是人のむまれ付たる天地の生理なり. 楽しまずして天地の道理にそむくべからず. つねに道を以て欲を制して楽を失なふべからず. 楽を失なはざるは養生の本也. (巻第二 38)

何事につけ, 自制心を働かせることは大切なことだが, 逆に, 自制心が強過ぎて人生の楽しみまで失う様では行き過ぎだと説いているのである.

何事もほどほどに, 中庸こそが人生の知恵とでも言えるのであろうか.
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