貝原 益軒の 『養生訓』 を読む (22)2010/09/13 03:08

養生の要訣ひとつあり. 要訣とはかんようなる口伝也. 養生に志あらん人は, 是をしりて守るべし. 是要訣は少の一字なり. 少とは万の事皆少なくして多くせざるを云. すべてつつまやかに, いは慾をすくなくするを云. 慾とは耳目口体のむさぼりこのむを云. 酒食をこのみ, 好色をこのむの類也. およそ慾多きのつもりは, 身をそこなひ命を失なふ. 慾をすくなくすれば, 身をやしなひ命をのぶ. 慾をすくなくするに, その目録十二あり. 十二少と名づく. 必 (カナラズ) 是を守るべし. 食を少なくし, 飲ものを少なくし, 五味の偏を少なくし, 色欲を少なくし, 言語を少なくし, 事を少なくし, 怒を少なくし, 憂を少なくし, 悲を少なくし, 思を少なくし, 臥 (フス) 事を少なくすべし. かやうに事ごとに少なくすれば, 元気へらず. 脾胃損ぜず. 是寿をたもつの道なり. 十二に限らず, 何事も身のわざと欲とをすくなくすべし. 一時に気を多く用ひ過し, 心を多く用ひ過さば, 元気へり, 病となりて命みじかし. 物ごとに数多くはゞ広く用ゆべからず. 数少なく, はゞせばきがよし. 孫思邈 (ソンシバク) が千金方にも, 養生の十二少をいへり. 其意同じ. 目録は是と同じからず. 右にいへる十二少は, 今の時宜にかなへるなり. (巻第二 50)

最も大切な奥義を口伝えに授ける事を要諦と言うが, 養生を志す人はこれを覚えて実践しなければならない.

その要諦とは 「少」 の一字である, と益軒は説いている.

総てに慎ましく, 謂わば欲をすくなくする事であると.

欲を少なくするには 12 ヶ条があって 「十二少」 と名付けられている.

即ち, 食事, 飲物, 五味の味付け, 色欲, 言語, 事, 怒り, 憂い, 悲しみ, 思い, 睡眠などを少なくする事である.

こうして何でも控え目にすると, 元気は減らず, 脾胃を損ねる事もなく, 寿命を保つ事が出来る.

十二のみならず, 何事にも身の努めと欲とを少なくすると良い.

一度に気を多く使い過ぎ, 心を多用すると, 元気が減って病気になり短命となる.

物事は数多く, 幅を広げ過ぎて行なってはならない. 数少なくして幅の狭い方が良い.

孫思邈 (ソンシバク) の著書 『千金方』 にも養生の十二少を言っているが, その主旨は同じである. 但し, 条項は同じではない. その中から, 益軒が今の時代に相応しいものを選んだからである.

(因みに, 『千金方』で言う「十二少」とは, 思, 念, 欲, 事, 語, 笑, 愁, 楽, 喜, 怒, 好, 悪を挙げている. 益軒は 11 のみ取り挙げているのである.)
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