続・iPS 細胞と Aldous Huxley の 「Brave New World」2010/10/01 03:01


処で, キメラの誕生もあながち不可能ではない, と知り, 私は, 英国の作家 Aldous Huxley が書いた 「Brave New World (すばらしい新世界)」 と言う Distopia (逆ユートピア) 小説を想い出したのである.

1932 年に発表されたこの小説は, 薔薇色の陶酔に包まれ, 止まる所を知らぬ機械文明の発達が行きついた人間が, 自らの尊厳を見失う.

その恐るべき逆ユートピアの姿を, 諧謔と皮肉の文体でリアルに描いた文明論的 SF 小説であり, 描写の極端さが (多くの SF 小説にあるように) 極めて諧謔的であるため, 悲観的なトーンにも拘らず, 不思議と皮肉めいた可笑しみが漂っている.

この小説では, 人間は受精卵の段階から培養瓶の中で 「製造」 され 「選別」 され, 階級ごとに体格も知能も決定され. 瓶から出た (生まれた) 後も, 睡眠時教育で自らの 「階級」 と 「環境」 に全く疑問を持たないように洗脳され, 人々は自分の生活に完全に満足するようになっている.

不快な気分になったときは 「Soma」 と呼ばれる薬を呑むと 「楽しい気分」 になれる.

人々は激情に駆られることなく常に安定した精神状態であるため, 社会は完全に安定している.

瓶から出てくるので, 家族はなく, 結婚は否定されてフリーセックスが推奨され, 常に人々は一緒に過して孤独を感じることはない.

隠し事もなく, 嫉妬もなく, 誰もが他の皆のために働いている. 一見した所ではまさに "楽園 (ユートピア)" であり, 「すばらしい世界」 なのである.

これ以上は, この小説の解説を控えるが, iPS 細胞の無限とも言える可能性については, キメラに代表される, "すばらしい新世界" への扉を開く事も決して夢ではない事を知った.

国谷キャスターが 「パンドラの箱」 と言った所以である.

日本では, 死に対する考えが, 西洋のキリスト教のそれとは大きく異なるものがあって, 臓器移植に対する拒否反応が未だに根強いものがある.

然し, 立花 隆氏が言った様に, 「研究は前進させなければならない」 だろう.

逆ユートピア的な世界の扉を開く危険性を充分認識しながら, 真の意味で前向きの研究を積極的に推進していく事は些かも躊躇してはならないと思う.

知らずにやるのと, 知っててやるのとは天地の差がある.

その意味で, 山中教授の真摯な研究態度には全幅の信頼を寄せられるものであると確信したのである.

以前も何度か, Warren G. Bennis の言葉, Managers are people who do things right, while leaders are people who do the right things. を引用したが, 山中教授は正真正銘の Leader であろう. 

今, 山中教授はノーベル賞の有力候補者であると言う. むべなるかな.
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