中村 彰彦 著 『名君の碑』 (文春文庫)2011/07/26 02:40

近代以降の関東大震災と, 東京大空襲の被害を除けば, 日本史上最大の災害は明暦の大火 (1657 年) である, と言われている.

焼死者は 10 万人を超えたとも言われ, 江戸城も西の丸を残して全焼, 武家方と町方を問わず市中は焦土と化したと記録されている.

そのうえ, 大火災後に気温が急激に下がり, 大雪も降った結果, 路傍に難を避けた被災者からも凍死者が相次いだと伝えられている.

この未曽有の大惨事の収拾に当ったのは, 4 代将軍徳川家綱を補佐した会津藩主・保科正之である.

将軍を上野寛永寺に移そうという本丸焼失後の議を退け, すぐに西の丸に移り, そこを焼かれても本丸跡に陣屋を建て, 江戸城を動くべきでないと決めた.

これには, 民衆が市中を避難し混乱している折に, 最高権力者が妄りに動いては人心を惑わし治安も乱れるので, 幕府が中央にどっしと構えて政策決定や指揮を一元化する狙いがあったのである.

まず, 司令塔の所在をはっきりさせた保科正之は, 旗本や御家人の扶持米を収納している浅草の米蔵が類焼しそうになると, 町方に 「米を勝手に持ち出して苦しからず」 と命じた.

路頭に迷った人びとに食料を与えることで, 被災者救助になり, 米を取り出す人びとが火消し代りも務めて鎮火にも役立つ, という一石二鳥の効果もあったのである.

さらに正之は, 寒さに震える人びとに, 1 日当り 1000 俵相当の粥を提供し, 犠牲者の拡大を防いだ.

また, 家を失った町方への救助金として合計 16 万両を支出した.

これは間口 1 間につき 3 両 1 分の計算であると言う.

この時, 正之は, 幕府の財政不安を案じる同僚に語った.

「こうした時にこそ官の貯蓄は, 武士や庶民を安心させるために与えるものなのだ.

支出もせずにむざむざ残しては, 貯蓄がないと同じではないか.

今回の大火事は前代未聞の事件なので, むしろ出費できる力が国にあるのは, 大いに喜ぶべきことだ」

正之は 「今回の大被害でも犯罪者が現れず, 世間が平穏無事なこと以上に国の幸いはない」 と述べたという.

東日本大震災でも海外で賞賛された, 日本人の高いモラルは古くからの美徳なのである.

中村 彰彦氏は, 保科正之を埋もれた歴史から掘り起こした作家である.

何故, 正之の様な名君が歴史から忘れ去られてしまったのか?

これは幕末明治にかけて, 会津藩は, 所謂, 賊軍となったからである.

中村 彰彦氏の 『名君の礎』 を読むと, 正之が, 民の幸せを願って, 如何に心を砕いていたか, 誰しも, 静かな感動を覚えずにはいられないだろう.

正之は二つの成句を挙げた.

-- 天命を知る者は, 天を怨みず.
-- 天命を知る者は, 惑わず.

「これらは感服するに足る言葉ではあるが, ちと飽き足りぬ処もある. これらの成句の難点は, 天命の一語に託けてはいるものの, 所詮, 人を慰め, 世を諦めさせる言葉にしかなっておらぬと言う事だ.

そこで, 今少し天命とそれへの対し方を諭して呉れる聖人の教えはないかと考えた処, 良い言葉を思い出した.

それは五経の一つ 「礼記 (ライキ)」 に見える言葉での, こう言うものだ」

そこで正之が口にしたのは, 「誠は天の道なり, これを誠にするは人の道なり」 と言う言葉であった.

誠実に生きる事こそが, 天に適う道である.

天ではなく, 人を主体として, そう発想し直すことによって, この成句は, 天命とはただ只管受け容れざるを得ない定めを言うのではなく, 人が切り拓いて行けるものだ, と語っている.

中村氏は, 作中で, 正之にこの様に言わせている.

菅サンは, 次から次へと, 思い付きの政策を打ち上げるだけで, 後藤新平が関東大震災時に即策定した復興案のような歴史的ビジンもなければ, 既存の官僚機構を実施部隊として駆使できるだけの, 復興の具体策も持ち併せていない様だ.

高杉晋作の様な天才だからこそ, 「騎兵隊」 と言う奇策が奏功したのであって, 秀才かもしれないが, 天才でもなんでもない菅サンは, 一国の宰相として, 奇策ばかり弄することなく, 江戸時代の名君 「保科正之」 の如く, 至誠にみちた王道の政治を行って欲しいものである.

菅サンの打ち出す政策に, 人間としての 「温もり」 が感じられないのは, 所謂, 天命を解っていないがためであろう.

この意味においてもリーダー失格と言わねばなるまい.

然し, 長州出身の菅サンには, 賊軍となった福島藩の藩祖である保科正之の "言行録" など, 見習う気になどなれるか! と言った処なのであろう.

"政治屋" に成り下がった今の国会議員サンたちには, 『名君の礎』 でも読んで, 真に民を思いやる温もりの感じられる政治とは何か? つらつら考え直して欲しいものである.

真の為政者とは?

先ず, 第一に, 人間として "卑" ではないこと, 人間としての "則" を弁え, 物事の判断において優先順位を過たないリーダー, と言う事であろう.

Have a nice day!
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