華岡青洲と麻酔術2011/07/27 02:46

有吉佐和子と言う才媛の作家がいた.

彼女の作品の領域は, 古典芸能や花柳界を描いた作品 「香華」 「一の糸」 や, 故郷和歌山県を背景とした 「紀ノ川」 「有田川」 など, また, 歴史物としては, 「助左衛門四代記」 「出雲の阿国」, 更に時代を先取りした社会派ものとも言える 「恍惚の人」 「複合汚染」 など, その活躍の幅は広い.

特に, 認知症の老人とその介護問題を描いた 「恍惚の人」 の発表が 1972 年で, 当時は未だ認知症などと言う疾患名など存在していない頃だったことを思うと, 彼女の先見性には正直感嘆せざるを得ない.

その有吉佐和子の作品に 「華岡青洲の妻」 と言う作品がある.

華岡青洲と言えば, 江戸時代後期, 宝暦から天保にかけての紀州の外科医である.

世界で初めて "麻酔" を用いた乳癌手術を成功させた事で, その名を知られている.

然し, その成功には, 家族の献身的な協力があったのである.

青洲は, 手術での患者の苦しみを和らげ, 人の命を救いたいと考え, 麻酔薬の開発を始める.

研究を重ねた結果, 曼陀羅華 (マンダラゲ) の実 (チョウセンアサガオ), 草烏頭 (ソウウズ, トリカブト) を主成分とした 6 種類の薬草に麻酔効果があることを発見.

動物実験を重ねて, 麻酔薬の完成まで漕ぎ着けたが, 人体実験を目前にして行き詰まってしまう.

青洲の苦境を知った実母の於継と妻の加恵が実験台になることを申し出て, 数回にわたる人体実験の末, 於継の死と加恵の失明という大きな犠牲の上に, 遂に, 全身麻酔薬 「通仙散」 ((別名 「麻沸散 (マフツサン)」) を完成させたのである.

「華岡青洲の妻」 には, この辺の経緯が, 嫁・姑の確執も絡め, ドラマチックに描かれている.

因みに, 青洲の全身麻酔による乳癌手術の成功 (1804 年) に遅れる事 42 年後の 1846 年に, 米国シカゴのウィリアム・T・G・モートンがジエチルエーテルを用いて全身麻酔を行っている.

青洲の臨床は外科を中心として, 内科, 皮膚科, 婦人科など多岐に亘っており, その医学は, 漢方は勿論, 蘭方 (オランダ医学), 鍼灸などを採り入れている.

今の 「統合医療」 とも言えなくもない. その思考は柔軟で先進性に富んでいたのである.

青洲は麻酔薬の他, 「中黄膏 (チュウオウコウ)」 や 「紫雲膏 (シウンコウ)」 と言った軟膏も考案している.

中黄膏も紫雲膏も、現在薬局で販売されている.

現に, 私は, お灸が初めて, と言う患者さんには, 施灸後、熱傷化膿予防の意味で, 念の為, 紫雲膏を塗ってあげている. 患者さんによって 「感受性」 が異なるからである.

Have a nice day!
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
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