誰か別の人の人生 ― 2011/10/23 02:13

10 月 5 日, IT 業界のカリスマ経営者だったアップルのスティーブ・ジョブズ氏が 56 歳の若さで亡くなった.
全世界でその早過ぎた死を悼んだのは誰しも知る処である.
彼に関して, 作家の中島 京子さんが, 日経コラム欄に, なかなか考えさせられる追悼の文を載せていた. 以下, 引用する.
スティーブ・ジョブズが亡くなって, その伝説的な人生の軌跡があれこれ話題になったが, スタンフォード大学の卒業式で行ったというスピーチは, きっとこれから何度も引用される事になるだろう.
殊に、「Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life...」 で始まる一節.
きみの人生は限られている, それを誰か別の人の人生を生きることで無駄にするな. きみの心と直感に従う勇気を持て....
卒業生たちに天才が贈った感動的なメッセージだ.
然し半世紀近くも齢を重ねてしまった身としては, 果して自分は人生を無駄にして来なかっただろうかと, 悩んでしまいもした.
いま私は小説家をしているのだが, 「心と直感」 に従えば 10 代の終りには既に自分のしたいこと, なりたいものを知っていた.
小説家デビューするのは 39 歳だから, ゆうに 20 年も 「someone else's life」 を生きていたと言えなくもない.
実際、自分の一番したいことをしていないというフラストレーションは, 20 代, 30 代の私を常に悩ませた.
会社員を辞めたのが 32 歳の時だったが, それはスティーブ・ジョブズが大学をドロップアウトしたのを評した言葉にならえば, 私の場合の 「人生最良の決断の一つ」 だった.
あれ以来, 自分のやりたい事と, 他人に見せたい自己イメージのギャップに悩むという, 若い人が陥りがちな罠から抜け出てラクになった.
同世代の女友達の一人は 「私はまだ人生無駄にしてるわよ」 と笑う.
彼女が 「心と直感」 で何をしたがっているのかは解らないけれど, 実際問題, 人はなかなかスティーブ・ジョブズのようには生きられない.
逆に言えば, スティーブ・ジョブズは余りに直線的に生きたから, 短命だったのかもしれない.
47 年間生きた者として, 私が彼のスピーチの中で肯いてしまった点は, 実は別の所だ.
彼が語った 3 つのストーリーの第 1 番目 「connecting the dots」 (点と点を繋げること) である.
大学をドロップアウトした彼は, キャンパスをうろうろしていてポスターやラベルに見られる美しい書き文字に魅了され, 単発でカリグラフィのクラスだけ受講したのだという.
その時の経験がなければ, 10 年後に開発された最初のマッキントッシュ・コンピュータが美しいタイポグラフィを持つことはなかっただろうとジョブズは言う.
そして, 「You can’t connect the dots looking forward. You can only connect them looking backwards.」 と振り返る.
人生には振り返って初めて繋がって見える点があるという事だ.
その時の興味でやってみたことや, 人との交流が, 何年も後に仕事で生きるなんて事は, 誰の身にも起こりうる小さな奇跡だ.
「別の人の人生」 を書くのが小説家の仕事なら, それを生きただけそれらが点になる. 無駄万歳と, 開き直る事にする.
以上が, 中島さんからの引用であるが, 言うは易くして, なかなか難しい命題である.
スティーブ・ジョブズの様な天才であればこそ, 「誰か別の人の人生」 ではなく 「自分自身の人生」 を只管駆け抜ける事が出来た, とも言える.
私の様な凡人は, 自分自身の人生を生きた比率は, 半世紀以上もの間, 小さな比率であった様に思う.
然し, 中島さんがいみじくも言っている様に, 誰か別の人の人生を生きた, と思われる, 一見無駄な (?) 経験が, 現在の自分を形成している.
言い換えれば, 当時は, 点に過ぎなかった事が, 線となって結び付き, さらに面ともなって, 遂には 3 次元を構成している, とも考えられなくも無い.
更に言えば, この世の中には, マザー・テレサの様に, 自分の一生を他人の幸せを願って捧げる人も少なくない.
それもまた一つの人生である. 尤も, マザー・テレサのような場合は, スティーブ・ジョブズの言う 「Waste (= 浪費する)」 には当らないのかもしれないが...
何れにせよ, どんな事でも, 人生無駄な経験はない, と思わないと, それまでの人生が空しくなるのが凡人なのかもしれない.
中島 京子さんではないが 「無駄万歳」 である.
Have a nice weekend!
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
http://www.ne.jp/asahi/shinqma/tommy/index.html
(なお, 診療予約時、「健康小話」 を読んだ, と言って戴いた患者さんは,
初診料が半額になります.)
往診も承っております.
心や身体に関する悩み事など, お気軽にご相談下さい.
E-Mail : tadashi.fukutomi@tcat.ne.jp
English speaking clients are welcomed!
Premium Healing Oil Massage is available!
学割適用始めました!
全世界でその早過ぎた死を悼んだのは誰しも知る処である.
彼に関して, 作家の中島 京子さんが, 日経コラム欄に, なかなか考えさせられる追悼の文を載せていた. 以下, 引用する.
スティーブ・ジョブズが亡くなって, その伝説的な人生の軌跡があれこれ話題になったが, スタンフォード大学の卒業式で行ったというスピーチは, きっとこれから何度も引用される事になるだろう.
殊に、「Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life...」 で始まる一節.
きみの人生は限られている, それを誰か別の人の人生を生きることで無駄にするな. きみの心と直感に従う勇気を持て....
卒業生たちに天才が贈った感動的なメッセージだ.
然し半世紀近くも齢を重ねてしまった身としては, 果して自分は人生を無駄にして来なかっただろうかと, 悩んでしまいもした.
いま私は小説家をしているのだが, 「心と直感」 に従えば 10 代の終りには既に自分のしたいこと, なりたいものを知っていた.
小説家デビューするのは 39 歳だから, ゆうに 20 年も 「someone else's life」 を生きていたと言えなくもない.
実際、自分の一番したいことをしていないというフラストレーションは, 20 代, 30 代の私を常に悩ませた.
会社員を辞めたのが 32 歳の時だったが, それはスティーブ・ジョブズが大学をドロップアウトしたのを評した言葉にならえば, 私の場合の 「人生最良の決断の一つ」 だった.
あれ以来, 自分のやりたい事と, 他人に見せたい自己イメージのギャップに悩むという, 若い人が陥りがちな罠から抜け出てラクになった.
同世代の女友達の一人は 「私はまだ人生無駄にしてるわよ」 と笑う.
彼女が 「心と直感」 で何をしたがっているのかは解らないけれど, 実際問題, 人はなかなかスティーブ・ジョブズのようには生きられない.
逆に言えば, スティーブ・ジョブズは余りに直線的に生きたから, 短命だったのかもしれない.
47 年間生きた者として, 私が彼のスピーチの中で肯いてしまった点は, 実は別の所だ.
彼が語った 3 つのストーリーの第 1 番目 「connecting the dots」 (点と点を繋げること) である.
大学をドロップアウトした彼は, キャンパスをうろうろしていてポスターやラベルに見られる美しい書き文字に魅了され, 単発でカリグラフィのクラスだけ受講したのだという.
その時の経験がなければ, 10 年後に開発された最初のマッキントッシュ・コンピュータが美しいタイポグラフィを持つことはなかっただろうとジョブズは言う.
そして, 「You can’t connect the dots looking forward. You can only connect them looking backwards.」 と振り返る.
人生には振り返って初めて繋がって見える点があるという事だ.
その時の興味でやってみたことや, 人との交流が, 何年も後に仕事で生きるなんて事は, 誰の身にも起こりうる小さな奇跡だ.
「別の人の人生」 を書くのが小説家の仕事なら, それを生きただけそれらが点になる. 無駄万歳と, 開き直る事にする.
以上が, 中島さんからの引用であるが, 言うは易くして, なかなか難しい命題である.
スティーブ・ジョブズの様な天才であればこそ, 「誰か別の人の人生」 ではなく 「自分自身の人生」 を只管駆け抜ける事が出来た, とも言える.
私の様な凡人は, 自分自身の人生を生きた比率は, 半世紀以上もの間, 小さな比率であった様に思う.
然し, 中島さんがいみじくも言っている様に, 誰か別の人の人生を生きた, と思われる, 一見無駄な (?) 経験が, 現在の自分を形成している.
言い換えれば, 当時は, 点に過ぎなかった事が, 線となって結び付き, さらに面ともなって, 遂には 3 次元を構成している, とも考えられなくも無い.
更に言えば, この世の中には, マザー・テレサの様に, 自分の一生を他人の幸せを願って捧げる人も少なくない.
それもまた一つの人生である. 尤も, マザー・テレサのような場合は, スティーブ・ジョブズの言う 「Waste (= 浪費する)」 には当らないのかもしれないが...
何れにせよ, どんな事でも, 人生無駄な経験はない, と思わないと, それまでの人生が空しくなるのが凡人なのかもしれない.
中島 京子さんではないが 「無駄万歳」 である.
Have a nice weekend!
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
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(なお, 診療予約時、「健康小話」 を読んだ, と言って戴いた患者さんは,
初診料が半額になります.)
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