皮膚は第三の脳 (5)2011/11/26 02:51

処で, 東洋医学においても, 皮膚は体を守るバリアを持っていると考えている.

詰り, 「衛気 (エキ)」という "気" が, 体表に巡らされ, それがバランスよく周る事によって, 健康が維持される, と考えているのである.

鍼灸の切診では腹部や背部, 手足などの四肢や脈などに直接触れることで, 体全体の状態を推測し病態を把握する過程がある.

体表上の変化を診る事で, 臓腑の病症を覗うのである.

鍼灸ジャーナリストの松田博公氏は 「刺入する鍼と刺入しない鍼とでは, 治効理論は異なると思います. 鍼を衛気に接触させ刺入していく過程の <衛気治療> <皮膚治療> <肌肉治療> <神経治療> が, それぞれ, 段階的に異なったメカニズムで効いていると思うのです. それを神経理論だけで解こうしたこれまでの鍼灸科学研究に無理があった.」 (あはきワールド 「鍼灸理論の末梢神経学説からの転換を」 ’07) とコメントしている.

また, 傳田さんと矢野 忠さんの 「未知なる皮膚の可能性を求めて」 (『医道の日本』 2006 臨時増刊号) の対談は, 皮膚と鍼灸の繋がりに関して, 豊富な実験と臨床経験から極めて興味深いものがある.

経穴は, 神経や血管, リンパ管などが集まっている場所らしい, という点では, 科学者の意見が一致するようだ.

「(経穴は) 体表神経を鍼灸で刺激することによって, 内臓自体に何らかの影響を及ぼすことは十分考えられる. ただ経絡はそうはいかないですよね. 経絡は, 何か一連の "筋" があって, それを刺激すると経絡線上のものが何らかの影響を受けるという考え方ではないかと思います.」 と傳田氏.

これに対して, 「経絡というのは "筋 (スジ)" を想定されますが, 必ずしもそうではないんですね. 経絡系の構造は立体的で, 深部に経脈があって, その経脈の上に経筋という筋肉の経絡系統がある, とされています. 経絡の基本構造は, 経脈, 経筋, 皮部という 3 層構造です. 大本が経脈とすれば, 体表に扇状になっている. ですから皮部 (膚) では, 筋というより帯状になっています. 経脈, 経筋, 皮部はそれぞれ独立した経絡系統ではなく, 気を介してインタラクティブに関係しています. 従って体表刺激であっても経脈に影響を及ぼし, 臓腑の機能調整を図ることも可能になります.」 と矢野氏は応えている.

然し, EBM 中心の西洋医学には, こういった機序はなかなか受け入れられないことも確かである.

やはり鍼灸研究においても現代中医学の RCT (ランダム化比較試験) に則った刺入鍼での末梢神経説が主流にある.

それ故, 傳田研究による, 表皮には沢山の受容体があり, 外部からの情報を処理する中枢神経と同じ分子機構がある, という発見は, 日本鍼灸にとっても非常に意味を持つことになったと言えるのである.

表皮細胞自身がセンサーとなって, まず情報を受け取り, 神経は次の情報伝達として存在するのであるから, 施術者にとっては手指を使っての診断や接触鍼, 浅い刺鍼などの効果を再度確認することになる.

一昨年, 傳田さんが著した 『賢い皮膚 - 思考する最大の <臓器>』 (ちくま新書 2009) では, 鍼灸効果の機序について, 次のように語っている.

「電気が生体に及ぼす研究をしていたベッカー博士が, いわゆる鍼灸における経絡の間に特異的な電気抵抗が認められることを報告しています. 皮膚表面で抵抗値が高いのは角層です. 然し, 死んだ細胞と脂質の集積である角層が, 局所特異的な電気的性格を示すとは考えられません. 真皮は電解質溶液に満たされたコラーゲンで, 抵抗は低いです. 従って, 経絡間の特異な電気的性質は, 表皮, 神経, および血管系に由来すると考えられます. 金属製の鍼は生体との間に電気二重層を形成し, それが表皮や神経系に作用する可能性があります. 温度刺激は TRP 系受容体を経て表皮や神経のイオン分布に影響するでしょう. これらの変化が自律神経系に作用したり, 皮膚からの様々な情報伝達物質の分泌を促すことが, 鍼灸などの皮膚刺激治療の作用機序ではないかと考えています.」

Have a nice weekend!
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
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