『ザ・コレクター (収集家)』 雑感2013/08/03 03:03

英国の作家 John Fowles が小説 『The Collector』 を発表したのは 1963 年であった.

この物語の主人公, フレデリック・クレッグは, 市役所に勤め, 蝶の採集を趣味とする孤独な若い男である.

彼は, 美人の美術学生のミランダ・グレイに惹かれているが, 社交的な性格ではなかったためアプローチができず, 距離を置いたまま憧れるだけだった.

処が, ある日, 彼は宝くじで大当りをした事から, 仕事を辞め, 田舎に一軒家を購入する.

そこでの生活で, 彼の孤独と, ミランダへの倒錯した想いとが募っていくのである.

普通に口説く事が出来なかった為, フレデリックは彼の "コレクション" に彼女を加えて, ミランダの自分への愛が十分に育つまで地下室に閉じ込めて "飼う" 事にした.

念入りな準備の末, 彼はクロロホルムを嗅がせてミランダを誘拐し, 地下室に閉じ込めてしまうのである.

フレデリックは, 何れミランダが自分を愛し始める事を信じていたのだ.

それ故, クロロホルムの麻酔から目覚めたミランダに, 彼がした事は誘拐だと責めたてられようとも, フレデリックは, ミランダに総ての敬意を捧げる事, 性的なふるまいには及ばない事, プレゼントのシャワーと快適な生活を約束し, 彼女の即時解放には同意しないのであった.

こうして, ミランダは, 長い監禁生活を余儀なくされた挙句, 解放される事無く, 重い肺炎に罹って死んでしまう.

ミランダの死により, 彼は自殺の誘惑に駆られもするが, 彼女の日記を読んで, 結局, ミランダからは最後まで愛される事はなかった事を知る.

その結果, 何も獲物はミランダでなくても構わなかったのだ, と思う様になり, 次の新たな獲物の "収集" を決意するのである.

この作品は, 発表の 2 年後の 1965 年に, ウィリアム・ワイラー監督によって映画化され, ミランダをサマンサ・エッガーが演じてアカデミー主演女優賞にノミネートされた.

また, 1977 年にも同名の映画 『コレクター』 が公開されているが, こちらは John Fowles の原作ではない.

けれども, 同じく女性の誘拐監禁をテーマにしたサスペンス映画である.

処で, 「事実は小説よりも奇なり」 と言われるが, 米国はオハイオ州クリーブランドで, 未成年を含む女性 3 人が, 10 年近くもの間監禁されていた事件が明らかになり, 誘拐・強姦・暴行などの罪で 53 歳の男が逮捕された.

男は, アリエル・カストロと言い, 2002 年から 04 年にかけ, 当時それぞれ 14 歳, 16 歳, 20 歳だった女性 3 人を自宅に監禁したのである.

今年 5 月に女性の 1 人が脱出し, 助けを求めたことから事件が発覚し, 逮捕に至ったのだった.

昨日の日経新聞によると, 地元の裁判所は現地時間の 1 日, 求刑通り, 仮釈放なしの終身刑と 「禁固千年」 とを言い渡したと言う.

日本でも, 同様の事件が2 件も起っている.

何れも, オーム真理教が引き起こした事件とは違った意味で, 日本を震撼させた事件である事は間違いない.

1 つは 「新潟少女監禁事件」 で, 1990 年 11 月, 当時小学 4 年生だった少女が, 新潟県三条市で下校途中に行方不明になった.

実に 9 年 2 ヶ月後に, 或る事から事件が発覚, 警察によって誘拐監禁生活から保護されたのである.

もう 1 件は, 北海道と東京に跨る女性監禁事件である.

2001年, 男は, 札幌市内で知り合った女性 (当時 20 歳) を自宅に連れ込んで 2 週間に亘り監禁, 女性にペット用の首輪を付け, 「ご主人様」 と呼ばせたかと思うと, 別の女性 (当時 19 歳) を監禁し, 同じ様に監禁・暴行を繰返した.

執行猶予の判決を受けた男は, 東京に転居し, 事もあろうに, 執行猶予期間中に, チャットで知り合った兵庫県出身の少女 (当時 18 歳) を, 2004 年 2 月に脅迫して上京させ, 都内のマンションやホテルで 3 ヶ月強に亘り, 札幌での事件と同様に, ペット用の首輪を付けて監禁した.

少女は 6 月初旬に監禁されていたマンションの一室から自力で脱出して保護された.

この種の犯罪に対して, どうも日本の刑は軽過ぎるのではないか? と私は常々感じているのであるが...

流石に John Fowles の 「作家としての眼」 は鋭く, フレデリックに 「次の獲物の収集」 を決意させた様に, この様な, コレクター (収集家) としての嗜好を治す事は現代医学を以ってしても, 治療する事は困難だからである. 

勿論, 鍼灸を以ってしても, この種の病気を治す事は至難の業です.

Have a nice weekend!
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