(1926) ウイルスで癌退治, 病巣細胞でのみ増殖 (2)2015/06/04 02:38

一方, 東大の甲斐 知恵子教授らが開発した治療法は, 乳癌を対象にしている.

麻疹ウイルスの一種が, 乳癌細胞の表面にある 「PVRL 4」 と呼ぶ蛋白質にくっついて感染する事を発見しており, 乳癌細胞だけで増殖し, 正常な細胞には感染しない様に, ウイルスを遺伝子操作したものである.

人間の乳癌を移植したマウスに注射すると, 癌は殆ど増殖せず, 病巣の癌細胞の殆どが死滅している.

健康なサルやイヌに投与しても副作用は出ず, 安全性に問題はなかったらしい.

甲斐教授は 「癌以外の細胞に感染する可能性は低い」 との見解を示しており, 2016 年にも臨床研究を始めたい意向との事である.

ウイルスを使う癌の治療法は, 従来の手術や抗癌剤などに比べて, 患者の負担が少ないと言われている.

注射して血流に乗って広がれば, 手術では取り切れなかった小さな癌や転移した癌を攻撃する効果が期待出来る.

然し, ウイルスならではの弱点もある様だ.

先ず, 治療用のウイルスを注射しても, 免疫の働きで排除されてしまい病巣に届かない可能性がある.

また, 繰り返し使うと, ウイルスに対する免疫が働いて効果が落ちる恐れもある.

免疫機構を免れて癌に到達するウイルスの開発が必須となるのだ.

また, 治療用ウイルスが体内で増殖するうちに変異, 正常な細胞を攻撃する様になる懸念もある.

血液注射する治療は, 動物実験で効果と安全性を確かめた段階に過ぎず, 人間で長期の影響を見極めなければならない.

変異によって副作用が起きた時の対処法も用意しておく必要があると言う.

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