(2069) 心の肥満2015/10/25 02:39

作家の松井 今朝子さんが興味あるエッセイを寄せている (日経夕刊 「あすへの話題」). 以下引用.

六日間の断食による減量を試みてから丁度丸一年.

幸い, 未だリバウンドはしていない.

きっかけは禁煙して四年目に発症した膝痛で, それは見事に解消した.

断食中は自宅で略ノンカロリーの錠剤とジュースを飲むだけの毎日. 初日は所謂好転反応に見舞われて苦しんだが, 二日目からはさほどの空腹感もなく, 普通に仕事をしていた.

何時もより熟睡できた所為か, 頭が冴えて寧ろ執筆は捗ったし, 五感が研ぎ澄まされた様な気もした位だ.

尤も, 単独での物書き仕事が主たる私ですら, 他人と全く会わずに過ごす期間を六日も拵えるのは容易でなかったから迂闊には勧められない.

面白かったのは体重の減り方で, 初日にガクンと数キロ落ちてからは, 毎日きっちり四百グラムずつ減ったので、如何やら私の一日の消費カロリーは四百グラムらしいと言う妙な刷り込みがなされ, 以来それが食事の際の一つの目安となった様な処もある.

何より変ったのは毎日必ず食べないと生きて行けない様な強迫観念から解き放たれた事だ.

食事は動物としての基本だけに, 以来, 人間の様々な欲望はひょっとしたら一種の強迫観念に囚われたものではないかと疑う様にもなった.

断食は禁欲の原初的なスタイルで, 生産性が乏しい時代に誕生した宗教の多くは禁欲的な傾向を持つ.

片や技術革新の爆発的な進展で生産過剰に陥り易い現代だと, 禁欲は罪にもなりかねない.

それだけに, 私たちは心の肥満が齎す病を避ける様, 何処かでデトックスする必要に迫られてもいそうだ.

以上, 断食の具体的な経験談を読んだのは, 私は初めてだったので, 興味深かった事もある.

然し, 最後の 「心の肥満」 には少なからず思い当る事が点があり, 思わず心の手綱を引締めたのであった.

Have a nice weekend!
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