(2186) 殺人の教唆 (1)2016/02/19 02:42

京都大学霊長類研究所の松沢 哲郎教授が 「博士とチンパンジーの知の探検」 と言うエッセーを日経朝刊に連載している事は, 本ブログで以前触れた事がある.

その松沢教授がこんな事を指摘している (第 9 回目 「殺しを命じるのは人だけ」).

5 月, ポーランドを再訪した.

最初の旅は一昨年, 2 週間掛け北から南まで講演して廻った.

自然の豊かな国である. 北のビアオビエージャの森にはヨーロッパ最後の野生バイソンがおり, 朝靄の中をヘラジカが悠然と横切る. 長閑な田園に街灯の様なものが林立し, 見上げるとコウノトリが営巣していた.

2 度目の今回は, 古都クラクフに滞在した.

地動説で有名なコペルニクスが学んだこの街で開かれた科学祭に招かれ, 一週間, 何処にも行かず静かに過ごした.

そして 2 年前に訪れ, 消化し切れないままになっていたアウシュビッツの事を考えた.

アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所. この地に在った 2 つの収容所の跡地である.

ナチス・ドイツの絶滅政策によって, 数百万人と言われるユダヤやロマの人々が殺された. ここに到着した人々は, 直ぐに働ける者とそうでない者とに選別された.

働けない者は, シャワーを浴びると称して一室に集められた. 天井から噴射されるのは, 水ではなくツィクロン B と言う毒ガスだった.

死体を運び出して焼却し, 或いは穴を掘って埋めるのは, 働ける者の仕事だった.

粗末なベッドが上下左右に並んだ部屋に詰め込まれ, 地面に掘られた一筋の溝に跨って用を足した.

彼らを監視するのは, カポ (看守) と呼ばれる同じ囚人だった.

ドイツ人は運営に関るほんの一握り.

囚人が囚人を監視し, 囚人を殺し, その死体の処理をした. 殺すか, 殺されるかのどちらかしかなかった.

同じ種に対する殺害は, 生物進化の歴史の中で, どこに起源があるのだろうか.

Have a nice day!
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