(2265) 母親と息子, 一生の強い絆 (1)2016/05/09 02:41

引き続き 『博士とチンパンジーの知の世界』 から.

霊長類の親子の絆について考察された 「母親と息子 一生の強い絆」 と言う副題が付いている. (以下, 引用)

アイというチンパンジーが私の研究のパートナーだ.

アフリカで生まれ, 1977 年 11 月に京都大学霊長類研究所に着いた時, 丁度 1 歳位だった. 今 39 歳になる.

2000 年 4 月にアイは息子のアユムを産んだ. アユムは今年 16 歳の誕生日を迎えた. チンパンジーの年齢は 1.5 倍すると, 略人間の年齢と釣り合う. 人間で言えば 20 代半ばの青年だ.

実はアユムと同じ年に, クレオとパルと言う 2 人 (ヒト科なのでこう数える事にしている) の女の子も生まれた.

生まれたばかりの赤ん坊が大人になるまで, 3 組の母子を身近で毎日の様に見続けた事になる.

子どもが男か女かによってチンパンジーの母子関係は違って来る. 今回はその話をしたい.

アフリカの野生チンパンジーの女性の一生を調べた事がある. 我々を含めて 6 つの調査地で, それぞれ数十年間に亘って観察し続けた資料を下に、534 の出産例を解析した.

平均すると 10 代前半に初めて出産する. 20 代でも, 30 代でも, 40 代でも産む.

チンパンジーの場合, 約 5 年に 1 度のペースで子どもを産む. だから年の近いきょうだいがいない.

人間は 2 - 3 歳離れた年の近いきょうだいが普通にいるし, 年子もいる.

然しチンパンジーは, 1 人ずつ産んで, 大事に育て, 手が離れる様になった頃に次の子どもを産む.

これも人間と違って父親という社会的役割がないから, 子育ては基本的に母親一人が総てをこなす.

生まれてから最初の 3 カ月間, 子どもは 1 日中母親にしがみついて過ごす. 濃密な母子関係の中で子どもを育てる.

チンパンジーでは死ぬまで産み続けるのが一般的だ.

従って生涯現役なので, 孫の世話をする 「おばあさん」 という社会的役割が略ない. 息子は群れにとどまるが, 娘は群れを離れてしまうからだ.

女性は初潮を迎えて出産が可能な年頃になると, 生まれ育った群れを離れ, 他所の群れに移る. 略 10 歳前後だ.

チンパンジーの母と娘の関係はそこで切れる. 新しい群れで出産し, 子育てをする. 人間の様に里帰りする事はない. その群れに他所から移って来た女性たちが子どもを産む. ただ, それが自分の息子の子どもか如何か分らない.

本日のカット写真提供 : 下平 宏氏 (モミジにキビタキ)

Have a nice day!
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