(2888) 勇気と後悔と2018/01/02 01:51

雑誌 「世界」 の初代編集長だった吉野 源三郎のベストセラー 「君たちはどう生きるか」 (岩波文庫) が昨年漫画化され, 年齢を問わず再度ブームとなっていると言う.

この本の主人公は, 中学 2 年生の本田 潤一君, あだ名はコペル君と言い, 彼の経験や発言を中心に話は進められて行く.

戦前に書かれた本で, 今の若い人には 「古い」 エピソードも少なくないが, 充分に読み応えある内容となっている.

例えば, 次の様な話が出て来る.

コペル君は雪合戦をしていて, 上級生に雪玉をぶつけて怪我をさせ 「誰だ?」 と凄まれる.

友達が名乗り出て殴られる. 誰かが名乗り出なくては場が収まらない状況だったのだ.

コペル君は背中に隠していた雪玉をそっと捨てて, 顔を伏せてしまう.

こうした自己保身の経験は誰しもあるのではないだろうか.

場が収まらないから, やってなくても名乗り出た友達は "勇気ある" 様に見える.

本当の犯人であるコペル君は, ただただ名乗り出るのが恐ろしいから黙っているのだ.

彼は "卑怯者" の様に見えるが, その後後悔と自己嫌悪から何日も寝込む事になって仕舞う.

その時, コペル君の叔父さんは次の様に言うのである.

「その後悔のお蔭で, 人間として肝心な事を, 心に沁み透る様にして知れば, その経験は無駄じゃあないんです. それから後の生活が, そのお蔭で, 前よりもずっとしっかりした, 深みのあるものになるんです」 と.

昨年, 道徳教育の見直しが成されたけれど, 昔も今も, 人間の本質は変らないものであある.

戦前出版されたこの本が再度ベストセラーとして復活している事実は, 道徳教育とは何かを考えるヒントになっている様に思うのである.

Have a nice new year holiday!
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