鶏鳴狗盗 (ケイメイクトウ)2013/03/20 02:23

殷, 周, 春秋戦国時代など, 古代中国に素材を求めた作品が多い宮城谷 昌光は不思議な作家である.

初めて出会ったのは, 直木賞を取った 『天空の舟』 で, これは夏王朝末, 桀 (ケツ) 王の治世に, 商王朝を創始して行く立役者伊尹 (イイン) を描いた作品だが, 読後, 心が洗われた様な, 清新で爽やかな気分を味わったのである.

以後, 彼の作品の愛読者となったのであるが, 何時も同じ様な読後感を得るのである.

その彼の作品の一つに 『孟嘗君』 という小説がある.

中国は戦国時代. 孟嘗君は, 斉の公族, 靖郭君田嬰 (デンエイ) の子で, 姓は田氏, 名は文と言った.

父の領地を受け継ぎ, 門下に食客数千人を養い, 魏の信陵君, 趙の平原君, 楚の春申君とともに戦国四君の一人に数えらてれいる人物だ.

秦の昭襄王は彼の賢なる事を聞き, 宰相とすべく秦に招いたものの, 讒言をする者があり, 昭襄王はこれを容れ, 田文が滞在中の屋敷を包囲し, 田文を殺そうとした.

田文は食客を使って昭襄王の寵姫に命乞いをしたが, 寵姫は田文の持つ宝物 「狐白裘」 と引き替えを助命の交換条件に持ち出したのである.

狐白裘とは狐の腋の白い毛だけを集めて作った衣で, 一着に狐が一万匹は必要と言われるほど希少なものだが, 田文は秦に入国した際に昭襄王にこれを献上していたのである.

すると食客の一人である狗盗 (犬の様にすばしこい泥棒) が, 昭襄王の蔵から狐白裘を盗み出してきた.

これを寵姫に献上すると, その執り成しによって屋敷の包囲が解かれ, 田文はひとまず危地を脱する事ができたのである.

急遽帰国の途についた田文は, 夜中に国境の函谷関まで辿り着いたが, 関は夜間は閉じられており, 明け方, 鶏が鳴き声を挙げるまでは扉を開けない規則となっていた.

既に気の変った昭襄王が, 追っ手を差し向けている事を察していた田文は再び窮地に陥ったが, 今度は物真似の名人と言う食客が名乗り出て, 鶏の鳴きまねをした.

すると, それにつられて本物の鶏も鳴き声を挙げ始め, 函谷関の扉が開かれたため, 田文は虎口を脱し, 秦から逃れる事が出来たのである.

常日頃, 学者や武芸者などの食客仲間は, 田文が盗みや物真似の芸しか持たないような者すら食客として受け入れていた事に不満を抱いていたが, この時ばかりは 「なるほど, 人には使いようがある」 と田文の "先見の明" に感心したと言う.

これが有名な 「鶏鳴狗盗 (ケイメイクトウ)」 の故事である.

さて, 前置きが長くなったが, ニワトリが夜明け前に 「コケコッコー」 と鳴くタイミングは, 外部刺激ではなく, 「体内時計」 によって制禦されている事が, 名古屋大の研究チームによって解明されている.

鶏鳴は, インダス文明では時計代りに用いられていたとの記録があるそうであるが, チームの吉村 崇教授 (動物生理学) は 「夜明け前に鳴くという, 当り前だと思っていたことが証明できた」 と話している由.

チームは, 4 羽で 1 グループにしたニワトリ 3 グループが 「コケコッコー」 と鳴くタイミングを記録. 12 時間点灯した後, 12 時間消灯するという条件でニワトリを 2 週間観察すると, 点灯 2 - 3 時間前から鳴き始めた.

また一日中薄暗い条件で飼育しても, ニワトリの体内時計が刻む約 23.7 時間の周期で, 朝方に当る時間帯に鳴く事が分ったと言う.

ニワトリは車のヘッドライトなどに照らされても反射的に鳴く事が知られているが, 一日中暗くした環境で, 様々な時間帯に光を照らしたり, 録音した他のニワトリの声を聞かせたりした場合でも, 朝方に多く鳴き, 夜間は鳴く事が少なかったという.

吉村教授は 「光や音に誘導されて鳴く際も, 体内時計が優先する事が明らかになった」 としている.

体内時計については, 本ブログで何度も採り上げて来たが, 人間も含めて, 自然界の生き者は 「体内時計」 に支配されているのである.

<本日のカット写真提供 : 下平 宏氏>

Have a nice holiday!
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