(4707) コロナ飲み薬, 普及期へ : 変異型にも有効2022/09/20 02:40

新型コロナウイルスの飲み薬タイプの治療薬が普及期を迎え様としている.

米メルクの抗ウイルス薬 「ラゲブリオ」 (一般名モルヌピラビル) の一般流通が 16 日に始まった.

これまで流通量が限られていたが, 今後は速やかに処方を受けられる様になる.

飲み薬タイプは変異したウイルスニも有効とされ, コロナ対策の切り札として期待されている.

ラゲブリオは, ウイルスが体内で増殖する為に必要な酵素を阻害する仕組みだ.

これまでの臨床試験 (治験) では, ワクチン未接種の高齢者や慢性疾患, 免疫不全を持つなど, 重症化リスクが高い人の入院・死亡リスクを 30% 低下させる効果が分っている.

これまでは流通量が限られていた為, 政府が買い上げて, 必要とする医療機関などに無償配布して来た.

メルクの生産体制が整った事から, 今後は卸会社を通じて医療機関や薬局に提供出来る様になった.

1 日 2 回, 5 日間服用する場合の薬価は約 9 万 4000 円だが, 引き続き全額公費負担となる為, 患者負担はないと言う.

国内で流行するオミクロンの派生型 「BA.5」 は免疫をすり抜ける特徴が増し, 既存のワクチンの効果が大幅に低下するとされ, 3 回接種した人でもコロナに感染する事例が相次いでいる.

ワクチンや中和抗体薬は, ウイルスの表面にある 「スパイク蛋白質」 を標的としている為, スパイクが変異した場合, 有効性が弱まる欠点がある為だ.

一方で, ラゲブリオなどの抗ウイルス薬は, ウイルスが体内で増殖する酵素などをピンポイントで阻害する為, ウイルスが変異しても有効性は低下し難い.

東京大学医科学研究所の研究チームは, BA.5 などに対し, ラゲブリオや 米ファイザーの 「パクスロビド」 (日本での製品名はパキロビッドパック) と言った抗ウイルス薬が有効性を維持している事を報告している.

8 日にはインドで感染が報告される新たな派生型 「BA.2.75」 に対しても有効性があるとする研究成果を発表している.

パクスロビドはラゲブリオと同じ飲み薬タイプで, 重症化する可能性が高い人の入院リスクを 89% 下げるとして期待されている.

米食品医薬品局 (FDA) は 7 月, パクスロビドを国の認可を受けた薬剤師に処方させる緊急使用許可を出した.

従来は医師らによる処方が必要だったが, 発症から 5 日以内に服用し始める必要がある為, 迅速に治療出来る様にしたと言う.

ウイルスが変異しても有効な事からパンデミック対策の切り札として, 抗ウイルス薬の開発競争は世界で過熱している.

米国の治験登録データベースによると, 現在 600 以上の研究が進行中だ. 中国でも 7 月に国産初となる飲み薬タイプの治療薬が承認された.

日本では塩野義製薬がパクスロビドと同じ仕組みの経口タイプの治療薬を開発中で, 5 月に創設された緊急承認制度での早期実用化を目指した.

審議では, 「ウイルスの減少は否定しないが, 有効性は推定出来ない」 「11 月に最終治験の結果が出るのなら, それまで待てばいい」 など慎重意見が多く出され, 同制度の適応は見送られた.

絶えず遺伝子を変化させる感染力の高い新型コロナは, ワクチンさえ普及すれば収束に繫がると言う世界保健機関 (WHO) の計画を覆す.

BA.5 の登場により注目が集まる抗ウイルス薬だが, 処方時の注意や選択肢の幅の狭さから, 処方は総じて低調だ.

より安全で、有効性が高く, 使い易い治療薬の開発が求められている.

Have a nice day!
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