健康小話

大阪大学の小比賀 聡教授らは, ﾊﾞｲｵ医薬品の一種である核酸医薬を癌細胞の中に効率よく届ける技術を開発したと言う.

新たに開発した薬剤を使って癌の細胞膜にある特定の蛋白質の働きを強め, 核酸医薬を細胞内に多く取り込ませる.

核酸医薬を使う抗癌剤の開発に役立つ由.

核酸医薬は人工的に作った DNA や RNA などの核酸を細胞内に送り込み, 病気の原因となる遺伝子の働きなどを調節して治療する次世代のﾊﾞｲｵ医薬品だ.

ただ, 核酸は水に馴染み易い性質を有しており, 油の特性を持つ細胞膜に阻まれ, 細胞内に届き難い為, 効果が弱まる課題があった.

研究ﾁｰﾑは細胞膜にある 「TRPC3/C6」 と言う蛋白質の働きを高めると, 多くの核酸が細胞内に取り込まれる事を突き止めた.

この蛋白質は正常な細胞には余り存在せず, 肺癌や前立腺癌などの癌細胞に多いと言う.

蛋白質の働きを強める低分子化合物を開発して核酸と共に癌細胞に与えた処, 細胞内に入る核酸の量が 5 倍に増えた. その結果, 癌に関わる遺伝子の働きを抑えられた.

癌を移植した実験用ﾏｳｽに投与すると, 癌細胞が取り込む核酸の量は 3 倍に増えた.

今後は癌細胞が取り込む核酸の量が増える詳しい仕組みを調べる. 開発した低分子化合物の臨床応用を見据え, 服用しても効くか如何かを検証する.

京都大学や医薬基盤･健康･栄養研究所との共同研究で, 成果を纏めた論文が英科学誌に掲載された.

本日のｶｯﾄ写真 : 下平 宏氏ﾌｫﾄｷﾞｬﾗﾘｰから (朝陽を浴びたｳｸﾞｲｽ)

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