熱中症2009/07/27 21:09

熱中症とは暑い環境で起る熱射病の総称で, 熱痙攣, 熱疲労, 熱射病 (日射病) の 3 段階がある.

人間は熱を産生したり, 放散したりする事によって, 常に体温を 36 度前後に保っている. 身体は暑いと皮膚に血液を多く送って冷却し, 発汗によって体温を下げる機能を持っている. けれども, 発汗が大量過ぎて脱水症状になるとこの働きが充分には機能しなくなり, 熱が体内に籠って腦の中枢機能に異常が起きる. この様に, 熱産生と熱放散の体温調節機能が障害されると熱中症になるのである.

熱中症は, 夏の炎天下に屋外で体育やスポーツに熱中する若者に多いと言う印象を持つ方が多いかも知れないが, 高齢者が閉め切った自宅の部屋で罹るケースも少なくない. また, 母親がパチンコに熱中している間に, 車中に置き去りにされた幼児が熱中症に罹って死亡したと言うニュースも時々耳にする. 特に夏期は乳幼児や高齢者に起り易いので注意が必要である.

最も重く死に至るのが「熱射病」. 体温が急激に上昇して 40 度を超えると, 所謂「ショック状態」となり, 意識がなくなってしまう. 極端な場合には, 多臓器不全となり, 死に至る事もある. 熱射病は幼児や病人, 老人は周囲の温度が高い状況が長く続くと罹り易い. 自宅室内であっても, 気温 25 度, 湿度 70% 以上は危険水域と言える. 寝ていても罹る事がある. 熱射病になると 40 度を超える高体温で血管の内膜に障害が起き, 殆どに出血傾向が現れる. 皮膚が赤くなる症状も出る. 小児や老人には余り発汗が見られないが, 運動中の若者は, 異常なほどの発汗や痙攣を起す. そして頭痛, 手足の知覚障害, 瞳孔散大等の諸症状が現れ, 失神や痙攣・ショック状態に進む. 呼び掛けても応答が鈍く, うわ言を発する様な時には, 直ぐに全身を冷やして, 救急車を呼んで病院へ連れて行かねば危険である. 熱射病にまで進行すると, 多臓器不全に陥り 3 時間と経たず死亡する危険があるからである.

一番軽いのは「熱痙攣」で, これは, 多量に発汗した結果, 塩分が欠乏し筋肉が痙攣を起すもの. スポーツで汗を掻き, 水分だけ補給して行くと, 塩分が失われ, 筋肉の興奮性が強まって筋肉痛を伴う痙攣が起きるのである. 平滑筋も痙攣するため, 腹痛や嘔吐, 口渇, 目眩, 頭痛も出るが, 体温は軽く上がる程度.である. 睡眠不足, 朝食を食べないなどの生活の乱れも下痢を招き, 熱中症の元になる. 脱水症状では集注力も落ちてトレーニング効果も低下する. 応急処置としては, 軽い眩暈や吐き気の場合であれば, 衣服を脱がせて日陰など風の流れる涼しい場所に移し, 適度の塩分を含んだスポーツドリンクないしは茶匙 1 杯 (5 G) 程度の塩を入れた水 (500 ml) 等を補給してやると良い.

一方, 「熱疲労」は発汗による脱水に加え, 身体の放熱反応が追いつかない状態を言う. 調整機能が破綻して体温は 41 度くらいまで上がり, 末梢血管が拡張して循環不全を起す. とにかく体温を下げる事. 処置が遅いと最も危険な「熱射病」に移行してしまう.

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