米山 公啓 著 「認知症は予防できる」 (ちくま新書) から (2) -12010/11/13 02:23

第 2 章では, 認知症の原因は何か? と言う観点から書かれている.

脳や神経の病気に難病が多いのは, 神経細胞は一度壊れると, 細胞自体は再生しないからである.

神経細胞自体が再生されないため, 自ら治癒する事がない.

パーキンソン病のように, 薬の効果が高い病気もあるが, それでも病気が進行してしまえば, 薬は効かなくなってしまう. 効果があっても, 薬は細胞自体を治している訳ではないからだ.

同様に認知症も現在の処, 薬で治す事は出来ない.

認知症の原因は大きく分けて 2 つある. "アルツハイマー病"と "脳血管性認知症" とである.

アルツハイマー病では 2 つの変化が見られる.

一つは 「老人斑」 と呼ばれる変化で, もう一つは 「神経原線維変化」 である.

従って, 脳神経外科などで CT や MRI を撮って貰い, 脳の画像を確認する事で, 診断が可能となる.

老人斑から細胞が死ぬ :

何故神経細胞は壊れてしまうのであろうか.

その原因が判明するきっかけは, 1984 年にジョージ・グレナーが, アルツハイマー病患者の脳に出来始める老人班の主成分が, アミロイドβ蛋白質 (Aβ) と呼ばれるペプチドである事を発見したところに始まる.

ペプチドと言うのは, 蛋白質の原料であるアミノ酸が繋がったものである.

さらに研究が進み, Aβは, 蛋白質を分解する酵素である βセクレターゼとγセクレターゼによってアミロイド前駆体蛋白質 (APP) が分解される事で発生する事が判った.

アルツハイマー病を発症する患者の脳では, Aβ が神経細胞の周りに蓄積し, 大量の老人班の沈着が起り, 神経細胞が死滅した結果, 大脳皮質が萎縮して, アルツハイマー病が発病する.

この発症プログラムをみると, Aβ が神経細胞にとって毒であるから, 神経細胞が壊れる様に見えるが, Aβ は正常な人においても合成, 分泌されている.

然し, 正常な人であれば酵素によって Aβ は分解され, 蓄積しない.

そのため, アルツハイマー病の患者の脳では, 分解が追い付かず, Aβ が蓄積すると考えられている.

ただ, Aβ は正常な人にも現れるので, Aβ はそれほど毒性が強くはないと考えられており, その蓄積で神経細胞が壊れて行くというのは矛盾があった.

さらに詳しい研究によって, Aβ が線維状に変化する前の Aβ オリゴマーと言う物質に毒性が高い事が判って来た.

これが神経細胞やその突起を壊す事によってアルツハイマー病が発生すると言われている.

神経原線維は, 正常の人にも存在するタウ蛋白が捩れて線維状になり, 神経線維の中に溜まったものである.

アルツハイマー病患者の脳を調べると, 糸屑の様なものが神経線維の中に見られる.

ただ, この変化はアルツハイマー病だけに特有なものではなく, アルツハイマー病でない人の神経細胞にも見られる. それでも, この変化もアルツハイマー病の原因ではないかと考えられている.

その一方で, 老人班はアルツハイマー病に最も早く起る変化であり, 老人班が先行して発生し, その後, 神経原線維変化が起ると言う説もある. 

現在の処, 老人班の原因となる Aβ が神経細胞の周りに溜って行く事が, アルツハイマー病の原因と考えられているが, まだまだ未知の事も多く, 何故そういった事が起るのかと言う疑問は解明されていない.
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