健康小話

ｱﾙﾂﾊｲﾏｰ病患者由来の人工多能性幹細胞 (iPS 細胞) を使い, 土壌に棲息する微生物が作る物質の中から治療薬候補となるものを見付けた, と京都大の井上 治久教授 (神経内科学) らのﾁｰﾑが発表している.

ｱﾙﾂﾊｲﾏｰ病は脳に 「ｱﾐﾛｲﾄﾞﾍﾞｰﾀ」 と呼ばれる蛋白質が異常に蓄積する事が原因とされる.

ﾁｰﾑは患者由来の iPS 細胞を脳の神経細胞に成長させ, 細菌や真菌が作る 98 種類の物質を振り掛けてこの蛋白質の量が如何変化するかを調べた.

植物などに寄生する真菌の一種が作る 「ﾍﾞﾙｶﾘﾝ A」 と言う物質を振り掛けると, ｱﾐﾛｲﾄﾞβの量が大幅に減少する事が分った.

低濃度なら神経細胞を傷付けないと言う.

抗生物質 「ﾍﾟﾆｼﾘﾝ」 など, 微生物が作る物質が素になった医薬品は多い.

ﾁｰﾑは 「微生物と iPS 細胞を組み合わせる事で, 人への投与で効果が期待出来る化合物を, 効率的に得られる可能性がある」 としている.

今回の成果を治療薬の開発に繋げるには, 発見した物質の作用によりｱﾐﾛｲﾄﾞβの量が減少するﾒｶﾆｽﾞﾑや, 副作用の有無などを調べる必要があると言う.

ﾊﾞｲｵｼﾞｪﾝとｴｰｻﾞｲとが米国で承認を得たｱﾙﾂﾊｲﾏｰ病治療薬は, その後, 治験ﾃﾞｰﾀに異論が出たりして, 当初想定した様な拡がりを見せていない様である.

今回の治療薬候補は, 実用化までに未だまだ時間が掛かるが, 夢の治療薬となる可能性を感じさせて呉れる.

本日のｶｯﾄ写真 : 下平 宏氏ﾌｫﾄｷﾞｬﾗﾘｰから (ﾍﾞﾆﾏｼｺ採食)

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