(1706) 新聞を読む愉しみ ― 2014/10/27 02:20

1 日の仕事が終り, 夕食後に寛いだ気分で, 夕刊を読むのが私の細やかな楽しみである.
読むのを楽しみにしている記事は幾つかあるが, 何時も疲れた頭を癒して呉れる記事があった.
例えば, 歌人の栗本 京子氏が毎週土曜日に寄稿している 「プロムナード」 の欄だ.
以下に, 1 例を紹介する.
夜の 9 時頃, 駅前商店街を歩いていると, 居酒屋から 4, 5 人の中年男性が出てきた.
通りすがりに, 「最高だあ, さあ行こう, 次へ」 「エッ、帰るの? もう帰るなんてさあ, 俺ひっくり返るよ」 などの会話が耳に飛び込んで来た.
「さいこうだあ, さあいこう」 「帰るなんて, 俺ひっくり返るよ」 改めて文字にすると凍り付きそうな, 親父ギャグである.
眉を顰める人もあろうが, 私はこの手のギャグに寛大である.
同音異義語の多い日本語では, 駄洒落や掛け言葉が生まれ易い. 富士の山の崇高さを 「不死」 の字に託したり, 新聞休刊日を捩って禁酒日を 「休肝日」 と呼んだり. 靴の名の 「通勤快足」 (快足に快速を掛けている) なんて言うのもある.
こうした言葉遊びは如何にも現代風に思われるが, 実は日本最古の勅撰和歌集 「古今和歌集」 の中にも親父ギャグ的な歌が入っている.
山吹の花色衣 (ハナイロゴロモ) ぬしやたれ問へどこたへずくちなしにして (素性 (ソセイ) 法師)
歌意は 「山吹色 (黄色) の衣は誰のですか, と尋ねても返事がない. 梔子 (クチナシ) (口無し) で染めたのだから答えられませんよ」.
当時は梔子の実から採った黄色色素が染料として使われていた.
「梔子」 と 「口無し」 を掛けたのが, この歌のミソ. 機知に富んだ一首である.
立ち別れいなばの山の峯におふるまつとし聞かば今かへりこむ (在原 行平)
歌意は 「いま別れて因幡国に行く私ですが, 皆さんが待っていると聞いたなら, 直ぐ帰ってきましょう」.
「いなば」 に 「因幡」 と 「往なば」, 「まつ」 に 「松」 と 「待つ」 を掛けている.
百人一首に入っているよく知られた歌で, 駄洒落というより高度な技巧を味わうべきであろう.
今から約千百年前に完成した 「古今和歌集」 は美意識の基準をうち立て, 和歌 (短歌) のみならず, その後の日本文化全般に影響を及ぼしたとされる. そんな絶大な集成に自在な言葉遊びの歌が収められているのは, とても楽しい.
現代にも言葉の達人は多く, 漫談家の綾小路 きみまろ氏はその筆頭であろう.
私の気に入りの 「きみまろギャグ」 を紹介したい.
二人は何時でもどんな時でも一緒よ, と誓い合った夫婦.
あれから四十年が過ぎて, 今では, 奥様はエステに通い, 旦那様は○○○○に通う. と続くのだが, さて, ○○○○の箇所に何が入るでしょうか.
パチンコ, スナック, カラオケ, 或いは一寸世知辛く, 病院, 職安...
色々考えられるが, 正解は, 旦那様はゴミ捨てに通う. である.
「エステ」 と 「ゴミ捨て」. 「ステ」 と 「捨て」 が韻を踏んでいるのが, 見事.
毎週 2 回の朝のゴミ捨て. 出勤の時にゴミ袋を持って出るのがすっかり習性になっているのだ.
ゴミ捨てだからこそ 「通う」 という動詞の反復性が生きる. 細部まで行き届いた言語感覚が光る.
奥様, 大丈夫です. 未だ若い. 老け込むには早過ぎます. 連れ込むには遅過ぎますけれど. と言うのも絶品.
「老け込む」 と 「連れ込む」. 響きは似ているが, 意味合いは天と地ほど異なる.
言葉の豊かさが笑いと共に手渡され, 思わず拍手した.
「古今和歌集」 の精神は今も生きている.
以上であるが, 如何でしょう?
私はこの様な機知に飛んだ文章に出会うと, 疲れた心身が見事に癒され, 明日への活力が湧いて来る様な気がするのである.
残念乍ら, 栗本さんの連載担当は 9 月で終了してしまった. 彼女のユーモアのセンスが懐かしい.
Have a nice day!
--------------------------------------------------------
・この 「健康小話」 のブログは, はり・きゅう・マッサージ トミイ
(http://www.ne.jp/asahi/shinqma/tommy/index.html)
の院長のブログです.
・鍼・灸・マッサージ・按摩・指圧を初め, 広く, 東洋医学や健康, 人としての生き方等に関して, 日頃感じている事を書いて行きます.
・なお, 診療予約時, 「このブログを読んだ」 と言って戴いた患者さんは, 初診料が半額となります.
・往診も承っております.
・心や身体に関する悩み事など, 何でもお気軽にご相談ください.
(E-Mail : tadashi.fukutomi@tcat.ne.jp)
・English speaking clients are welcomed!
・Premium Healing Oil Massage is available!
・学割適用始めました.
・モニター希望者募集中. (詳細お問合せ下さい.)
読むのを楽しみにしている記事は幾つかあるが, 何時も疲れた頭を癒して呉れる記事があった.
例えば, 歌人の栗本 京子氏が毎週土曜日に寄稿している 「プロムナード」 の欄だ.
以下に, 1 例を紹介する.
夜の 9 時頃, 駅前商店街を歩いていると, 居酒屋から 4, 5 人の中年男性が出てきた.
通りすがりに, 「最高だあ, さあ行こう, 次へ」 「エッ、帰るの? もう帰るなんてさあ, 俺ひっくり返るよ」 などの会話が耳に飛び込んで来た.
「さいこうだあ, さあいこう」 「帰るなんて, 俺ひっくり返るよ」 改めて文字にすると凍り付きそうな, 親父ギャグである.
眉を顰める人もあろうが, 私はこの手のギャグに寛大である.
同音異義語の多い日本語では, 駄洒落や掛け言葉が生まれ易い. 富士の山の崇高さを 「不死」 の字に託したり, 新聞休刊日を捩って禁酒日を 「休肝日」 と呼んだり. 靴の名の 「通勤快足」 (快足に快速を掛けている) なんて言うのもある.
こうした言葉遊びは如何にも現代風に思われるが, 実は日本最古の勅撰和歌集 「古今和歌集」 の中にも親父ギャグ的な歌が入っている.
山吹の花色衣 (ハナイロゴロモ) ぬしやたれ問へどこたへずくちなしにして (素性 (ソセイ) 法師)
歌意は 「山吹色 (黄色) の衣は誰のですか, と尋ねても返事がない. 梔子 (クチナシ) (口無し) で染めたのだから答えられませんよ」.
当時は梔子の実から採った黄色色素が染料として使われていた.
「梔子」 と 「口無し」 を掛けたのが, この歌のミソ. 機知に富んだ一首である.
立ち別れいなばの山の峯におふるまつとし聞かば今かへりこむ (在原 行平)
歌意は 「いま別れて因幡国に行く私ですが, 皆さんが待っていると聞いたなら, 直ぐ帰ってきましょう」.
「いなば」 に 「因幡」 と 「往なば」, 「まつ」 に 「松」 と 「待つ」 を掛けている.
百人一首に入っているよく知られた歌で, 駄洒落というより高度な技巧を味わうべきであろう.
今から約千百年前に完成した 「古今和歌集」 は美意識の基準をうち立て, 和歌 (短歌) のみならず, その後の日本文化全般に影響を及ぼしたとされる. そんな絶大な集成に自在な言葉遊びの歌が収められているのは, とても楽しい.
現代にも言葉の達人は多く, 漫談家の綾小路 きみまろ氏はその筆頭であろう.
私の気に入りの 「きみまろギャグ」 を紹介したい.
二人は何時でもどんな時でも一緒よ, と誓い合った夫婦.
あれから四十年が過ぎて, 今では, 奥様はエステに通い, 旦那様は○○○○に通う. と続くのだが, さて, ○○○○の箇所に何が入るでしょうか.
パチンコ, スナック, カラオケ, 或いは一寸世知辛く, 病院, 職安...
色々考えられるが, 正解は, 旦那様はゴミ捨てに通う. である.
「エステ」 と 「ゴミ捨て」. 「ステ」 と 「捨て」 が韻を踏んでいるのが, 見事.
毎週 2 回の朝のゴミ捨て. 出勤の時にゴミ袋を持って出るのがすっかり習性になっているのだ.
ゴミ捨てだからこそ 「通う」 という動詞の反復性が生きる. 細部まで行き届いた言語感覚が光る.
奥様, 大丈夫です. 未だ若い. 老け込むには早過ぎます. 連れ込むには遅過ぎますけれど. と言うのも絶品.
「老け込む」 と 「連れ込む」. 響きは似ているが, 意味合いは天と地ほど異なる.
言葉の豊かさが笑いと共に手渡され, 思わず拍手した.
「古今和歌集」 の精神は今も生きている.
以上であるが, 如何でしょう?
私はこの様な機知に飛んだ文章に出会うと, 疲れた心身が見事に癒され, 明日への活力が湧いて来る様な気がするのである.
残念乍ら, 栗本さんの連載担当は 9 月で終了してしまった. 彼女のユーモアのセンスが懐かしい.
Have a nice day!
--------------------------------------------------------
・この 「健康小話」 のブログは, はり・きゅう・マッサージ トミイ
(http://www.ne.jp/asahi/shinqma/tommy/index.html)
の院長のブログです.
・鍼・灸・マッサージ・按摩・指圧を初め, 広く, 東洋医学や健康, 人としての生き方等に関して, 日頃感じている事を書いて行きます.
・なお, 診療予約時, 「このブログを読んだ」 と言って戴いた患者さんは, 初診料が半額となります.
・往診も承っております.
・心や身体に関する悩み事など, 何でもお気軽にご相談ください.
(E-Mail : tadashi.fukutomi@tcat.ne.jp)
・English speaking clients are welcomed!
・Premium Healing Oil Massage is available!
・学割適用始めました.
・モニター希望者募集中. (詳細お問合せ下さい.)