健康小話

然しながら, ｾｶﾝﾄﾞｵﾋﾟﾆｵﾝに関する相談を受けた際, 医師として困惑するｹｰｽがしばしばある.

それは, 非常に特殊な癌治療を行っている医師や病院を指定して, 「xx病院の〇〇先生に, △△治療に可能性があるか説明を受けたい」 と言われた時などである.

癌患者には, 癌になったと言うﾏｲﾅｽの事実を皮切りに, 次々にﾏｲﾅｽ思考になる事を衝き付けられる事が多い.

そんな状況下では, 『あなただけに』 『絶対に』 『どんな癌にも』 と言ったﾎﾟｼﾞﾃｨﾌﾞな言葉をとても渇望する様になるものだ.

冷静に判断して呉れるｻﾎﾟｰﾀｰを周りに作る事も大切な事だ.

癌に限らず, 治療とは, あくまでも科学的根拠がある事が大前提となる. これまで積み重ねてきた医療, 治療の統計に基づく "ｴﾋﾞﾃﾞﾝｽ" に因って成り立っているのである.

処が, 中には, 科学的根拠の乏しい特殊な治療法を実施している所もあるのが現状なのだ.

癌治療の最中, 民間療法や代替療法をやってみたいと希望される患者さんも出て来る.

然し, 民間療法で癌が治ったとされるｹｰｽの多くは, そもそも癌でなかったものを癌だとして治療をしたり, どんな癌を何の根拠に基づいてどの様に治療したのかが残念ながら明確ではないものが少なくない.

それでも民間療法に人気があるのは, 時に奇跡の様な事が起こるからである.

私自身にも経験があるが, 癌細胞の中には, 何の治療を受けなくても, 自然に縮小したり, 消えてしまったりするものもある.

余命 6 カ月と言われたのに, 癌細胞が突然小さくなり治ってしまう様なｹｰｽを, 医学的には 「自然退縮」 と呼び, 6 万 - 10 万人に 1 人の確率で起こると言われている.

若しも, この患者さんが頼みの綱として民間療法を行っていれば, 「〇〇療法で癌が消えた」 と言う事になる.

と言う訳で, それが治療の成果だったのか, 自然退縮だったのか, それとも本当に癌だったかが分らないために, 非常に誤解を生み易いのである.

Have a nice weekend!
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