(2533) 精子・卵子の保存を助成2017/02/01 03:24

滋賀県は, 将来子供を持つ事を望む癌患者に, 治療前に精子や卵子を採り, 凍結保存する費用を助成する事業を昨年 4 月から開始している.

県健康医療課がん・疾病対策室によると, 「癌患者だけを対象にした凍結保存の助成事業は全国初ではないか」 との由.

抗癌剤や放射線の治療については, 生殖能力が低下する事がある.

治療前に精子や卵子を保存しておけば, その後, 解凍し, 体外受精をするなどして子供を持てる可能性が広がるのである.

2016 年度当初予算に助成や, 患者向けリーフレットなど啓発活動の費用として 202 万円が盛り込まれていると言う.

対象は県内に居住し, 凍結保存を希望する 43 歳未満の癌患者の男女で, 1 回に限り保存費用として男性は最大 2 万円, 女性は同 10 万円を支給している.

然し, 解凍や体外受精の費用は助成対象外となっている.

少子化対策の一つとして, この種の対策が他の自治体にも拡がる事を期待したい.

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(2534) 難化する新薬開発2017/02/02 02:20

医療の質向上に新薬の存在は欠かせないが, 国際的な競争は激化しており, 開発の難易度は高まっている.

この程, 日経がそんな背景について次の様に解説している.

1) 薬はどの様に開発するのか?

医療用の医薬品は動物実験で安全性を確認した後, 臨床試験 (治験) と呼ばれる段階に移る.

通常は 3 段階に分かれ, 最初の第 1 相は健康な人で安全性や用量を判断する.

第 2 相は 100 - 500 人の患者に投与し, 副作用も詳しく調べる.

第 3 相はより多くの患者が対象となり, 有効性を検証する.

創薬研究から薬として販売されるまで 10 年前後を要するが, 開発の成功率は数 % 程度と言われる.

2) 開発のコストは?

米タフツ大が 2014 年に発表した研究によると, 00 年以降は 1 つの薬を開発するのに 25 億 5800 万ドル (約 2900 億円) 掛っている.

80 年代は 4 億 1300 万ドル, 90 年代は 10 億 4400 万ドルだった.

それまでにない効果が求められるので, ハードルが上がり続け, 開発コストは増えている.

3) 国の支援策は?

革新的な薬や, 患者が少なく治療法もない病気に効くと期待される薬を開発する場合, 助成金を出したり助言したりしている.

昨年春, 日本医療研究開発機構をつくり, 大学などの研究成果を早期に実用化する支援もしている.

製薬各社は, まず国が重視する領域でサポートを受けながら薬を開発し, 発売後, 患者が多い他の病気に応用して開発の効率を高めている.

最近, ある病気の薬が別の病気に効く事が分った, と言うニュースが多い背景には製薬各社のこうした戦略がある.

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(2535) 潰瘍性大腸炎発症に関わる遺伝子2017/02/03 02:55

大阪大の竹田 潔教授らは, 潰瘍性大腸炎の発症に関わる遺伝子を発見している.

遺伝子が作る蛋白質が, 腸内細菌の大腸組織への侵入を防ぎ, 大腸炎の発症を抑えている事が判明したのである.

潰瘍性大腸炎は, 腸内細菌が大腸組織に侵入して繰り返し炎症を起こす事が原因の 1 つとされている.

日本には 10 万人以上の患者がいると言われるが, 根本的な治療法がない潰瘍性大腸炎の治療の足掛りになると言う.

研究チームは, 大腸表面にある上皮細胞で活発に蛋白質を作り出している遺伝子に注目し, この遺伝子を持たないマウスを作り, 上皮を傷付ける薬物を飲ませた.

すると, 激しい腸炎が起き, 12 日間で 7 割が死滅した.

この遺伝子が作る蛋白質と腸内細菌を混ぜて顕微鏡で観察した処, 細菌のプロペラである鞭毛に蛋白質が結合し, 運動を妨げていた事が確認された.

蛋白質が大腸の上皮への侵入を防いでいる事が明らかになったのである.

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(2536) 腫瘍リスクの iPSを効率的に除去2017/02/04 03:19

慶応義塾大学の福田 恵一教授らは, iPS 細胞から作った心筋細胞の中から, 腫瘍になる恐れのある iPS 細胞を効率的に除去する新手法を開発している.

アミノ酸の一種を入れずに培養すると, 従来の半分以下の時間で 1000 分の 1 以下に減少したのである.

2018 年にも心臓病の再生医療を目的とした臨床研究で応用したい意向と言う.

iPS 細胞は様々な細胞に育つのであるが, iPS 細胞が残ったまま移植すると腫瘍になるリスクが指摘されている.

これまでも, 乳酸を加えるなどして不要な iPS 細胞を取り除く試みは存在している.

けれども, 除去率にばらつきがあり, 10 日程度の時間を要していた.

一方, 新技術は, 培養液から更にアミノ酸の一種を減らすと, 3 - 4 日程度で殆どの iPS 細胞が消失している.

研究チームは iPS 細胞から作った心筋細胞を心臓に注射で移植し, 虚血性心疾患を治療する臨床研究を 18 年にも始める計画と言う.

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(2537) 尿中の細胞からクローン2017/02/05 02:20

尿に含まれる細胞から親と全く同じ遺伝情報を持つクローンマウスを誕生させる事に, 山梨大学の若山 照彦教授らが成功している.

動物を傷付けずにクローンを作ったのは世界初と言う.

特長は, 少量の尿でも作製可能で, 絶滅の恐れがある貴重な動物の保存などに役立てる事が可能になる様だ.

尿には細胞や細菌や蛋白質など様々な物質が含まれている.

研究チームは尿管や膀胱から剝がれ落ちた生きた細胞を, 尿から採取する手法の確立に成功したのである.

取り出した細胞の核を, 別のマウスの核を除いた卵子に移植し, 代理母マウスの卵管に移した.

462 個の卵子から 4 匹のクローンが生まれた. すると, 生まれたマウスには生殖能力が備わっており, 交配すれば子孫を残せる事も確認出来たと言う.

これまで, クローン動物を作るには, 皮膚などの体細胞を利用している.

けれども, 尿を使えば, 野生動物を捕まえて細胞を取り出さずに済み, ストレスを与えない.

今後は, 排泄後, 時間が経過した尿でも使えるか検討して行く予定と言う.

興味ある実験成果と言える.

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