健康小話

京都大学 iPS 細胞研究所の江藤 浩之教授らは, iPS 細胞から血小板を大規模に製造する培養装置の設計を完了したと言う.

血小板の品質は保ったまま, 従来の 6 倍の規模で製造出来るとの事.

献血者の減少で血小板製剤の不足が懸念される中, iPS を活用して効率よく製造する事で, 血小板の安定供給が可能となる.

血小板は傷口の止血に重要な役割を果す血液の成分で, 手術や大怪我で止血が必要な際や血小板減少症などの患者に輸血される.

日本赤十字社などが献血により製造した血小板製剤を販売しているが, 高齢化に伴う手術数の増加などで血小板の需要は高くなる一方, 人口減により献血者が減って需給が逼迫する事が懸念されている.

血小板不足を解決する為, iPS 細胞から血小板を作り出す手法が注目されている.

江藤教授らはこれまでにﾋﾄの iPS 細胞から血小板のもととなる 「巨核球」 を作り, これを培養装置の中に取り付けた板で攪拌し適度な刺激を与える事で, 血小板を製造する事に成功していた.

新たな培養装置は培養装置製造の佐竹ﾏﾙﾁﾐｸｽ (埼玉県戸田市) などと共同で設計し, 45 ﾘｯﾄﾙの容量で血小板を作れる. これまでは 8 ﾘｯﾄﾙが最大だった.

容量が大きくなると攪拌の刺激が行き渡らなくなり, 血小板の止血能力などの品質が低下する事が課題だった.

新たな培養装置では, 板の枚数を増やし, 攪拌速度を工夫する事で, 小容量時と同様の刺激を与えられるとｼﾐｭﾚｰｼｮﾝ (模擬実験) で確認した.

江藤教授は記者説明会で 「血小板の大量製造の為の世界初の道筋が出来た」 とｺﾒﾝﾄしている.

成果は英科学誌 「ｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝｽﾞ･ｴﾝｼﾞﾆｱﾘﾝｸﾞ」 に掲載されている.

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