貝原 益軒の 『養生訓』 を読む (2)2009/10/13 21:21

養生の術は先ず心気を養うべし. 心を和にし, 気を平らかにし, 怒りと慾とを抑え, 憂ひ, 思ひを少なくし, 心を苦しめず, 気を損なはず, 是心気を養ふ要道なり. 又, 臥す事を好むべからず. 久しく眠り臥せば, 気滞りて巡らず. 飲食未だ消化せざるに, 早く臥しねぶれば, 食気塞がりて, 甚だ元気を損なふ. 戒むべし. 酒は微酔にのみ, 半酣を限りとすべし. 食は半飽に食ひて, 十分に満つべからず. 酒食共に限を定めて, 節に越ゆべからず. 又, 若き時より色慾を慎み, 精気を惜しむべし. 精気を多く費やせば, 下部の気弱くなり, 元気の根本断へて必ず命短し. もし飲食色慾の慎みなくば, 日々補薬を服し, 朝夕食補を為すとも, 益なかるべし. 又風寒暑湿の外邪を畏れ防ぎ, 起居動静を節にし, 慎み, 食後には歩行して身を動かし, 労働して血気を巡らし, 飲食を消化せしむ. 一所に久しく安坐すべからず. 是皆, 養生の要なり. 養生の道は, 病なき時慎むにあり, 病発りて後, 薬を用ひ, 針灸を以病を攻むるは, 養生の末なり. 本と努むべし. [巻第一 (9)]

主旨はお判りと思う. 心を穏やかに平常心を保ち, 酒食は程々, 身体を適度に動かし, 節度のある生活を送り, 気の滞る事のなきようにするのが養生の道だ, と説いている.

また, 睡眠は長く取り過ぎても, 気が滞るので良くない, とも言っているのは, なかなかの卓見と言える. 他所の箇所でも 「早寝早起き」 を説いている. 英語にも Early birds get the worm. (早起き鳥は餌に有り付ける) と言う諺がある. 早朝は, 所謂 「天の気 (エーテル)」 が一番大気中に満ちている時刻でもある. この時間帯にエーテルを身体一杯に吸い込み, 一日の活動に備える事は意味ある事なのである.

病気になってから薬を飲んだり, 鍼灸に頼ろうとせず, 健康な時の心掛けが養生の要である, と. 益軒は今で言う 「メンタルヘルス」 や 「予防医学」 の重要性に既に気付いていたのである.

貝原益軒は, 83 歳と当時としては長命を全うしたが, 養生訓に書かれている内容は, 日々自ら実践した事に基づいている. 寝たきりになって長生きしているのでは, 生きる楽しみが失われる. 人生, 心も身体も共に健康であってこそ.

単に長生きしさえすれば良いのではなく, 大切なのは, 所謂, 「健康寿命」 なのである.

ここでも出て来ているが、東洋医学では, 「気の滞り (ストレス) が血の流れを停滞」 させ, これが病の根源となる, と考えている. 現代社会はストレス社会であり, 精神的な意味でも, 肉体的な意味でも, ストレスは発生する. だからストレスを上手に発散する事が健康維持には大切である.

ストレス, 即ち, 気滞・血滞を取り除くのに, 東洋医学が役に立つ事は言うまでもない.
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
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