山本 一力 著 『たすけ鍼』 から (1)2011/12/02 03:29

私の好きな作家の一人に山本 一力氏がいる.

高知市の生まれで, 14 歳で上京, 工業高校を卒業後, 10 数回の転職を繰返したが, 1997 年に 『蒼龍』 でオール讀物新人賞を受賞して作家デビューを果した.

彼は, 事業に失敗, 2 億数千万円の借金を抱え, どうしたら借金を返せるか, あらゆる方策を考えつくした最後の一手が 「小説だ! これでいくしかない」 と決心, それが 「オール讀物新人賞」 の受賞に繋がり, 5 年後の 『あかね空』 の直木賞受賞に結実し, 借金を返済されたのだそうだ.

返済の方法も, 本が出るたびに印税は直接債権者に行くようにしていたとの事, 理由は, 一度でも自分の口座を通ると惜しくなるからだったと言う.

かつて, 本ブログの何処かで紹介したと思うが, その彼に, 『たすけ鍼』 と言う本がある. 表題どおり, 鍼灸師が主人公の小説である.

この本は, 自らの鍼灸治療の体験や 「未病を治す」 と言う東洋医学の思想を背景に書かれたもので, 東京に実在の鍼灸師・染谷 (ソメヤ) 先生がモデルになっているのだそうである (小説の中では 「センコク先生」と読ませている).

山本氏は職業柄, パソコンを使って仕事をしており, 眼を酷使し, 視力に不安を感じ始めた折, 鍼灸治療を受けていた奥様から勧められたのが鍼灸との出会いだったとの事.

実際に, 鍼灸治療を受けてみると, 目の前がパッと明るくなり, 「あ, これはいい!」 と通院する様になったのだそうだが, その時, 鍼灸師の言った言葉が胸に響いたと言う.

山本氏が 「目の具合が悪い」 と訴えたのに対して, 目を調べて目の治療をした訳ではなく 「脈や舌を診て, 手や足に鍼を打つ」 治療を施し, 「目が悪いからと言って, 目の治療をしたのでは治らない. 人間の身体を末端まで探って行って原因を突き止め, そこから直そうと言うのが東洋医学なのです」 と言ったのだと言う.

また, 『たすけ鍼』 には幼馴染の相棒で漢方医も登場するが, この漢方医も京都に実在する漢方医・田村先生がモデルになっているのだとの事 (小説の中では 「昭年 (ショウネン) 先生」 として登場.) ).

山本氏は東洋医学について, 下紀の様に述べている.

日本の今の医学界では漢方や鍼灸を, 医学とは別のものとして見下す風潮がある.

あれは非常に可笑しい事ではないかと思う.

東洋医学は, 複雑な心身というものを洞察し, 経験を積重ねながら解釈して, 現在までにも残る様な医術書に纏め上げて来た.

歴史と言う点では西洋医学とは比較にならない程遥かに深いものがある.

それだけの背景を持っているものに対して, 現在の医学界は余りにも尊敬が足りないと思います.

この事に対して私は非常に憤りの念を憶えます.

同時に 「医者って何だろう?」 と思った時, 直ぐに鍼灸師の染谷先生や漢方医の田村先生の姿を連想するのです.

Have a nice day!
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