(1711) 見事な 「弔辞」2014/11/01 02:25

先日, 日経夕刊 「プロムナード」 欄に寄稿されていた, 歌人の栗本 京子さんの連載エッセーを読むのを愉しみにしていた話を書いた.

今回もその続きで, 有名人が亡くなると, その関係者から追悼文や弔辞が公にされるが, 以下は 「小高 賢氏を偲ぶ」 と題された栗本さんの追倒文である.

歌人の小高 賢氏が脳出血のため急逝したのは今年の 2 月 10 日. 69 歳であった.

親交のあった者たちが集まって 5 月 19 日に都内中野区で 「小高 賢を偲ぶ会」 が行われた.

160 名余りの友人知人が集い, 遺族 (奥さんと息子さん, 娘さん) を囲んで心の籠った会が催された.

昨年下半期, 小高氏は本紙夕刊の 「プロムナード」 を執筆していた. 毎週土曜日の担当だったので, 私の前任者に当る.

彼の文章は語り口が闊達で話題も豊富. 愛読しておられた方々は多かった事と思う.

「小高 賢」 はペンネームで, 本名は 「鷲尾 賢也」.

講談社の名編集者として, 講談社現代新書や 「選書メチエ」 「日本の歴史」 などの刊行に携わった.

著者と編集者という立場で出会った歌人の馬場 あき子氏に勧められ, やがて短歌を作り始めた.

ペンネームの 「小高」 は奥さんの旧姓を拝借した, との事. 微笑ましい命名の由来である.

氏と初めて会ったのは 20 年以上前, 都内神田神保町の会合での事. 帰り際, 東京の地理に不慣れだった私に, すっと氏は近づいて, 「東京駅まで出るの? 大手町で半蔵門線から丸ノ内線に乗り継ぐといいよ. 半蔵門線は一番前の車両に乗ること. 今の時間なら道が空いてるから, タクシーでもいいけど. 八重洲側じゃなく丸の内側までね」 とテキパキと教えてくれた.

私の方向音痴を瞬時に察知したその眼力. 簡潔かつ懇ろな道案内. そして, あくまでもさり気無く助言してくれるスマートさ.

流石, 江戸っ子で慶應ボーイ! と感心して, 以来すっかり小高氏のファンになった.

十数年前から現代歌人協会の理事の仕事を通して交流が深まり, その後に小人数での勉強会などでも頻繁に顔を合わせる様になった.

氏の最大の魅力は認識の幅広さと視点の自在さであろう.

例えば 「老いの歌」 (岩波新書) では, 八十代九十代の歌人が旺盛な作歌活動をしている状況に注目.

枯淡の境地に程遠く, 名歌性からは逸脱しがちだが, 豊かで味わい深い世界が広がる事に光を当てた.

この時, 老年の歌に 「(老い) というフロンティア」 と名付けた処に編集者のセンスが窺える.

フロンティアとは, 最前線あるいは未開の地と言った意味. 老いは新しい, と言う謂わば逆転の発想が実に見事である.

本紙の毎週水曜日夕刊で 「食あれば楽あり」 の連載をしておられる発酵学者の小泉 武夫氏を初め, 編集者や新聞記者や大学教授などを誘って句会を立ち上げたのも, 氏の実行力の賜物.

本気と笑いに負け惜しみも混じった句会の様子は 「句会で遊ぼう」 (幻冬舎新書) に纏められている.

俳句や短歌は文学であると同時に 「座の文芸」 であり, 遊びの中から充実が生まれる.

楽しく読みながら, そう気付かせて貰った.

最近の氏は, 東日本大震災による原発事故に心を痛めていた.

逝去後に出た 「現代短歌」 3 月号に, "もはやわれしりぞかざると決意する 妻をいざない茱萸 (グミ) 坂通い" という歌を見付けた.

脱原発を訴えるデモに参加するため, 首相官邸に近い茱萸坂に通っていたのだ.

パソコンには次の歌集の予定稿が入っており, 茱萸坂に因む歌集名が付けられていたという.

最期の日まで熱く主張し続けた小高さん. 狡いよ, 消え方が格好良すぎるよ, と申し上げたい.

以上であるが, いやはや, 何とも見事な追悼の言葉ではないか.

小高氏の業績と人となりとを気負う事無く紹介しており, 然も, 栗本さんご自身の人となりを初め, 様々な事も読者に分らせる内容となっている.

如何したら, この様な素晴らしい文章が書けるようになるのであろうか?

文は人なり, と言われるが, 人間そのものを磨かねばならないのだろう.

Have a nice weekend!
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