(2266) 母親と息子, 一生の強い絆 (2)2016/05/10 02:51

これに対し, 母親と息子の関係は生涯途切れない.

チンパンジーは父系社会で, 男性はみな群れに残る. 人間の様に一組の男女が強い絆で結び付く事はない. 男女ともに複数の異性と交わりを持つ.

男性からみれば, 生まれてきた赤ん坊は自分の子か, 兄弟が産ませたおいめいか, 弟妹で, みな血が繋がっている.

夫婦や嫁姑という関係がない社会で, ただ一つ, 一生続く強い絆が母親と息子の関係なのだ.

アイとアユムを見ていても, 母親と息子の絆の強さを実感する.

小さい頃のアユムは毎朝 9 時になると, アイと一緒に勉強部屋にやって来て, コンピューターに向かって様々な認知課題を解いていた.

10 歳前後で、アユムは母親から独り立ちして, 群れのおとなの男性である父親アキラの後に就いて歩く様になった. 群れにいる大人の女性たちの後を追う.

最近では, アイだけが勉強部屋にいる事が多くなった.

アユムは屋外運動場で他の仲間と一緒にいる. そんな時, 運動場で喧嘩が起きたとしよう.

すると, アイは直ぐに手を止めて耳を澄ます. 遠くから幽かな声でもアユムの悲鳴が聞こえると, 一目散に駆け付けようとする.

他に 2 組の母親と娘がいるが, アイとアユムの関係にと比べるとずっと淡泊だ.

男の子でも女の子でも, 生まれた時からずっと濃密な母子関係のなかで育つ事は全く同じだ.

それなのに, 母親と息子, 母親と娘の関係は子どもの成長と共に著しく変る.

チンパンジーの父系社会を反映した特性だと言える.

彼らの近況をホームページ (http://langint.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/) で紹介している. 是非ご覧戴きたい.

引用は以上であるが, この様な研究報告は, 人間社会がどの様にして形成されて行ったのか解明する一助となり, 大変に興味深い.

原始人間社会にも, かつて, 所謂 「乱交」 時代が存在したのだろうか?

一方, チンパンジーやボノボの社会から見ると, 適齢期を遥かに過ぎても結婚しない昨今の人間社会は, "ノーマル" ではない, と言う事になるのであろう.

本日のカット写真提供 : 下平 宏氏 (見上げるキビタキ)

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