日本最古の医学書 『医心方』 (2)2011/01/25 03:32

処で, 『医心方』 ないしは, 古典医学研究と言うと, 槙 佐知子さんを抜きには語れない.

一主婦に過ぎなかった槙さんが, この難解とも言われる 『医心方』 全 30 巻を完訳したのである!!.

この書は医学書でありながら, 引用文献は, 宋以前の医書, 仙書, 史書, 思想, 哲学, 文学, 博物学, 易学, 辞書類など 200 以上に上り, 中には一書で 100 巻, 50 巻のものもあり, 既に中国では失われている文献もあるという.

内容は内科, 外科, 産婦人科, 小児科, 精神科, 泌尿器・肛門科, 養生ほか, 現代医学にはない錬金術, 呪術, 占い, 妖怪変化対策などからなっている. (槇 佐知子 著 『古代医学のこころ』 NHK 出版を参照)

さて, 『医心方』 で最も人口に膾炙しているのは, 巻第 28 「房内」 (一般には 「房中術」 という) であろう.

その説は, 中国古代思想の核心とされる 『陰陽五行論』 に基づくものである.

「房内」 は第 1 章から 30 章まであり, 12, 13, 16, 17 章は交接体位が図解で示されている.

「至理第 1」 (第 1 章の 「至理 (シリ)」 とは原理の意) は, 「房中術」 とはどういうものかを説く.

房中に耽ってインポテンツ気味のノイローゼに陥った黄帝 (中国伝説上の帝王) が, その道の大家とされる素女 (仙女?) に相談することから話は始まる.

<黄帝, 素女に問ふ, 曰く, 吾, 気衰へて和せず, 心内 (ココロ) 楽しからず, 身は常に, 恐危 (オソ) る, 将に如之何 (イカン) せんとす. 素女曰く, 凡そ人の衰微 (オトロ) ふる所以は, 皆, 陰陽交接 (マジワリ) の道を傷 ((ソコナ) ふのみ. 夫れ女の男に勝るは, 猶ほ水火を滅すがごとし. 之れを知りて行へば, 釜鼎 (カマ) の能く五味を和して以て羹臛 (アツモノ) を成 (ツク) るが如し. 能く陰陽の道を知る者は五楽を成し, 之れを知らざる者は, 自命 (イノチ), 将夭 (ミジカ) し. 何ぞ歓楽を得んや, 慎まざるべけん .>

黄帝の相談をうけた素女は, 房中術の入門手引きはしたものの, 具体的には仙人仲間の彭祖 (ホウソ = 伝説上の人物で 700 余歳まで生きたとされる) に聞けという.

彭祖の答を要約すると "多接" "少泄" "易女 (その道に易ある女子と接す)" "御少女 (年若い女子と接す)" (女性の場合は年若い男子と接す) の 4 点である.

ここに貝原 益軒の 「接して漏らさず」 という 『養生訓』 の片鱗がみられるのである.

「至理第 1」 は以下の如く締められている.

<...故に年卅 (サンジュウ) に至らば, 須らく房中の術なる者を識るべし. 其の道は極めて近きも, 人の能く行ふもの莫し. 其の法は, 一夜に十女を御して泄 (モラ) さざるのみ. 此に房中の術畢 (オワ) んぬ. 薬餌 (クスリ) を兼ねて, 四時絶つこと勿ければ, 則ち気力百倍して, 智慧日に新なり. 然るに此方の術や.>

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