(1729) 在るがままの美しさ2014/11/19 03:30

以前紹介した, 慶応大学医学部の三村 将精神神経科教授が, こんなエッセーを寄せていた (日経夕刊 「医師の目」, 以下, 引用).

先週末, 学会出張の合間を縫って, 1 年ぶりに唐招提寺を訪れました.

6 月初旬の鑑真和上の命日に, 開山忌として鑑真の坐像が特別開扉されます. 今年も御影堂には長い焼香の列が絶える事がありませんでした.

静かに閉じた鑑真の目には何が映っているのでしょうか.

5 回の渡航に失敗し, 失明してもなお日本へ渡る決意と情熱を失わず, 65 歳を過ぎて遂に来日を果した鑑真の透徹した姿は強く心を打ちます.

大学の私の部屋には鑑真の大きな写真が飾ってありますが, 心が倦んだ時, その静謐な横顔は何時も私を勇気付けて呉れます.

初夏の唐招提寺は躑躅が咲き乱れていました.

国宝の仏が立ち並ぶ寺の中で, 私が好きなのは新宝蔵に人知れず佇む如来形立像です.

両腕と頭部のない姿は 「唐招提寺のトルソー」 として知られています.

身体の一部が欠失している彫像 (トルソー) としては, ルーブル美術館のミロのビーナスやサモトラケのニケが有名ですが, 唐招提寺のトルソーも昔から多くの文人や芸術家を魅了して来ました. 何故でしょうか.

白洲 正子氏は著書 『十一面観音巡礼』 の中で松尾寺のトルソーに触れ, 「朽木と化したその姿は, 身をもって仏の慈悲を示している様な感じがする」 と述べています.

私はトルソーを見る度に 「在るがまま」 という事の美しさを考えるのです.

彫像は損傷を受ければ普通それを修復します. その方が見栄えもいいし, 保存面でも優れているでしょう.

然し, 長い年月を経て手を加えずにある不完全な姿は, 時に人に強い感動を与え, 元の姿への想像力を搔き立てます.

医学は実学です.

福沢 諭吉は北里 柴三郎に向けた 「贈医」 という七言絶句の中で, 医師は自然の家来に過ぎないなどと言わずに, あらゆる手段を尽くしてこそ初めて医業の真諦が生まれるのだと謳っています.

欠けているものを補い, 余剰なものを殺ぎ落とすのが医学です.

今やこれまで夢物語だった臓器移植や再生医療も可能になって来ました.

それ自体は素晴らしい事ですし, 私自身も日頃は神経再生に関る研究を行っています.

然し在るがままの状態を受け入れる姿勢も忘れてはいけないのではないか.

特に, 精神科領域の問題は, 性格や考え方にしても, 完全無欠なものはなく, 人それぞれだからこそいいのではないか.

「唐招提寺のトルソー」 を見ているとそんな事を思うのです. (引用終り)

"在るがままの状態を受け容れる姿勢", "特に, 精神科領域の問題は, 性格や考え方にしても, 完全無欠なものはなく, 人それぞれでいいのではないか" と言う言葉は, 示唆する事が多く, 深い共感を覚えるのである.

Have a nice day!
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