ひきこもりの高齢化2011/02/28 02:49

斉藤 環さんと言う, 爽風会佐々木病院診療部長の精神科医がいる.

思春期・青年期の精神病理学が専門で, 病跡学で, 長年ひきこもり問題の治療・支援活動を続けている方である.

著書には 『博士の奇妙な思春期』 『戦闘美少女の精神分析』 『ひきこもりから見た未来』 などがある.

その斉藤先生が 12 年前に書いた 『社会的ひきこもり』 が当時ベストセラーになった.

斉藤先生は, 今でもひきこもりの問題を取り巻く状況は少しも変っていない, と言う.

現象面で変ったのは, ひきこもっている人たちの高齢化で, その意味で, 事態はむしろ深刻化しているとも言える様だ.

「立ち直れない場合, 親が気を配らなくてはいけないのはお金です.

自分が死んだ後のことも考えて子どものライフプランを立てる必要がある. この子が働けない場合, どうサバイバルさせるのか. 退職金や年金, 貯金をどう使っていくのか, 遺産をどう残すのか.

定年を迎えたら専門家と相談して必ず資金計画を練って欲しい」

と斉藤先生は警告している.

先生は, ひきこもりの人は 100 万人を超えているだろうと推測している.

ひきこもりのきっかけは千差万別で, 友達に裏切られたとか, 虐めに耐えられなくなったとか, 受験の失敗など挫折体験がベースになっている事が多いと言う.

一般的には不登校から始まるが, 最近は就労後にひきこもる例も多いのだそうだ.

ひきこもりには内向的な人が多く, 押しなべて皆苦しんでいる.

一番の苦しみは自分自身を肯定できない事であって, 人が自信を持つ基盤は, 社会的地位, 仕事, 人間関係の 3 つであるが, 彼らにはこの 3 つが総て欠けているのだ, と斉藤先生は言う.

「世界的にひきこもりが多いのは日本と韓国.

親孝行が美徳で, 親が子どもをなかなか手放さない儒教文化圏の国です. 欧州はイタリアに多い.

3 カ国に共通するのは家族主義で, 30 代までの若者と親の同居率が高いこと.

一方, 英国はホームレスの若者が多い. 親が家に抱え込んでいるか路上にいるかの違いで, どこの国でも社会に適応できない若者はいるのです」

「ひきこもりから立ち直るのは困難で, 私が診ている人の中でも 1 - 2 割です.

だが適切な対応策さえ取れば, 回復は不可能ではない.

親は情けないと叱咤激励しますが, これは逆効果. 圧力をかけるのも不安にさせるのもダメです. 不信感を募らせるだけで家庭内暴力に発展しかねない.

まず本人が安心できる家庭環境をつくり, 信頼関係を回復した上で、医師など第三者が介入して治療に入ることが重要です.

長引けば長引くほど抜け出すのが困難になります. 不登校になった時など早い段階で対応するのが大事なのです」

「最初にひきこもった世代は今, 40 代半ばになっています. 20 年後には 65 歳になり, 老齢年金の受給年齢に達する.

親の年金で生活し, 税金を払ったことのない高齢者集団が一挙に出現するのです.

これを社会がどう受け止めていくのか.

また今後は若者のホームレスも増えるでしょう. 今は親がひきこもりの子どもを抱えていますが, 次第に親の意識も変化すると思うからです.

こうした難問にどう対応するのか, 今から考えておかないといけない. その時に慌てても遅いのです」

と斉藤先生は警告している.

だが, 現在までの処, 政治的には殆ど何の対応も検討されていないのが実態である.

ひきこもりの子どもを抱えている親たちは, 自分たちだけで問題を抱え込まず, もっと積極的に市役所の社会福祉課などに相談を持ちかけて行かねばならない様に思うのである.

相談したからと言って, 妙案は出てこないとは思うが, とにかく, 一人で問題を抱え込まない事が解決への第一歩である.

Have a nice day!
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