貝原 益軒の 『養生訓』 を読む (37)2011/03/01 03:05

食する時, 五思あり. 一には, 此食の来る所を思ひやるべし. 幼くしては父の養をうけ, 年長じては君恩によれり. 是を思て忘るべからず. 或君父ならずして, 兄弟親族他人の愛をうくる事あり. 是又其食の来る所を思ひて, 其めぐみ忘るベからず. 農工商のわがちからにはむ者も, 其国恩を思ふべし. 二には, 此食も農夫勤労して作り出せし苦みを思ひやるべし. わするべからず. みづから耕さず, 安楽にて居ながら, 其養をうく. 其楽を楽しむべし. 三には, われ才徳行儀 (コウギ) なく, 君を助け, 民を治むる功なくして, 此美味の養をうくる事, 幸甚し. 四には, 世にわれより貧しき人多し. 糟糠の食にもあく事なし. 或うゑて死する者あり. われは嘉穀をあくまでくらひ, 飢餓の憂なし. 是大なる幸にあらずや. 五には, 上古の時を思ふべし. 上古には五穀なくして, 草木の実と根葉を食して飢をまぬがる. 其後, 五穀出来ても, いまだ火食をしらず. 釜甑 (カマコシキ) なくして煮食せず. 生にてかみ食はゞ, 味なく腸胃をそこなふべし. 今白飯をやはらかに煮て, ほしいまゝに食し, 又あつものあり, 飣 (テイ) ありて, 朝夕食にあけり, 且, 酒醴ありて心を楽しましめ, 気血を助く. さらば, 朝夕食するごとに, 此五思の内, 一二なりとも, かはるがはる思ひめぐらして忘るべからず. 然らば日々に楽も亦その中に有べし. 是愚が臆説なり, 妄にこゝに記す. 僧家には食事の五観あり, 是に同じからず. (巻第三 18)

この節では, 食に対する感謝の心を忘れるな, と説いている.

食事に際しては, 考えなければならない事が 5 つある.

1 つは, 父親や君主或いは兄弟親族などのお蔭で食の恵みがある事.

2 つは, 農民のお蔭で食事が食べられる事.

3 つは, 特に是と言った才覚もない自分が食事が出来る事.

4 つは, 世間には自分より貧しい人たちが大勢いて, 粕や糠を食べていたり, 或いは, それすら食べられずに飢え死にしてしまったりしている. 飢えの心配のない自分の幸に思い至らねばならない.

5 つには, 大昔は五穀 (米, 麦, 粟, 豆, 黍) は採れなかったので, 草木の実や根や葉を食べて飢えを凌いでいた. その後, 五穀が採れる様になってからも火を用いて調理する術を知らなかったので, 生で噛んで食べたのである. それで味もなく胃腸を壊す事もあったと思われる. 現在は, 白い飯を軟らかく煮て, 吸い物もあり惣菜もあって朝夕の 2 回に亘って十分に食べている. さらに, 酒もあって心を楽しませ, 気血を助けている.

朝夕の食事のたびに, この五思の中の一つでも二つでもいいので, 思い起して忘れる様なことがあってはならない.

有難う, と言う感謝の心が大切なのです.

かつて, 私が幼い頃、父親から 「お百姓さんのご苦労を忘れないように. ご飯粒を食べ残したりしては罰が当る」 などと良く言われていたのを懐かしく思い出す.

それもあって, 今の若い人たちが, レストランなどでご飯を残したりしているのを見ると 「もったいない!」 などとつい思ってしまうのである.

Have a nice day!
-----------------------------------------------------------
はり・きゅう・マッサージ トミイ
http://www.ne.jp/asahi/shinqma/tommy/index.html
(なお, 診療予約時、「健康小話」 を読んだ, と言って戴いた患者さんは,
初診料が半額になります.)
心や身体に関する悩み事など, お気軽にご相談下さい.
E-Mail : tadashi.fukutomi@tcat.ne.jp
English speaking clients are welcomed!
Oil massage is available!

コメント

トラックバック