シーベルトの次はベクレル? ほか - 藤林レポートから2011/03/25 03:43

昨日は, 遂に, 原子炉事故を収束すべく, 決死の作業員のうち, 3 名もが被曝してしまった様だ. 傷ましい事である. 大事に至らず, 1 日も早い恢復を皆で祈りたい.

今, 誰もが放射能汚染の被害について, 不安を抱いていると思う. 然しそれは「漠然とした」「過った」不安であってはならない.

さて, 本欄で 3 度に亘って紹介した, 元東芝原子炉設計部長などの経歴を有する藤林 徹氏は, 「正しい危機感」を持とうと主張しているが, 更にレポートを寄せている.

氏の了解のもと, 全文を引用するので, 是非, 最後まで読み通して, 今後の自分自身の行動に反映させて欲しい. (原子力には素人でも理解し易いよう, 平易な文章で書いてくれている.)

1. 単位のお話 – シーベルトの次はベクレル? (2011/03/23)

「ベクレルって何ですか?」という質問を多く受けましたので, 整理してみます.

ベクレルとは放射能の強さです. 電球で例えると, 60 ワットや 100 ワット といった明るさの単位と同じものです.

細かい説明をすると, よう素やセシウムなどの放射性物質は, 自ら放射線を出しながら, 安全な物質に変っていきますが, これを “崩壊” と言います.

すなわち, 1 秒間に崩壊する数で放射能の強さを表すのです.

1 秒間に 1 個が崩壊すると 1 ベクレルです. 「セシウム 137 が 1 日 1 平方メートルあたり 84 ベクレル検出された」といった記事は, 84 個のセシウム 137 が崩壊したという意味です.

これはミクロの世界の数ですから, 小さな現象ですが, 数は大きく表示されます.

一方で, シーベルトという目盛りは, 人体が放射線を浴びて受けるエネルギーの量です.

電球で言えば, 100 ワットの電球でも遠くにいると暗いのに, 近くだと本が読めますね. その様に, 受ける時の条件が入った単位です.

細かい説明になりますが, 放射線の種類や受ける側の組織への影響などが違いますから, それらを総合して全身への影響を示すものです.

ベクレルとシーベルトの関係は, 例えば, 約 1 L の牛乳からよう素が 5200 ベクレル, セシウムが 420 ベクレル検出され, この牛乳を 1 L 全部飲むと, 人体への影響は約 120 マイクロシーベルト程度になるといった関係です.

処で, 「よう素は 8 日, セシウムは 30 年が半減期で, その期間で強さが半分になる」とよく書かれています.

これから, よう素は直ぐなくなるが, セシウムはなくならないので怖いと思います.

でも, これは体内に摂取された場合の話ではありません.

例えば, 海に放出され, あるいは土壌に堆積したときの話です.

この様な放射性物質が体内に入ったら, もう一つの半減期があります.

それは "生理半減期" と言って, 体に入ったものが排泄されてなくなるまでの期間みたいなものです.

また, 「セシウムの半減期が長い」という事は, ゆっくり崩壊するという事なので, 体内にある間に放出する放射能の強さは弱いのです.

これらの影響を計算した結果は, 「生理半減期」と検索するとネットで見る事ができます.

それによると, よう素 131 は 94.5% が有害ですが, セシウム 137 は僅か 0.63% しか有害ではありません.

そうなると, よう素の方に気をつけなければなりませんが, これはよう素の錠剤で小さくできます.

この錠剤を服用すると, 錠剤の放射能を出さないよう素に摂取した <放射性のよう素> が混ざって, 殆どが体外に排泄されますから, 有害な放射性のよう素の影響が緩和されるという仕組みです.

ですから, 放射性のよう素を大量に摂取した時にタイミングよく服用することが大事で, 予防のため服用する, または常用したりすると, 副作用はあっても効果はゼロという事です.

処で, 誰でも自分の体内に 6,000 から 7,000 ベクレルの放射能があるという事をご存知でしょうか.

これは人体にあるカリウム 40 という放射性物質があるからです.

だから, この程度の放射能であれば人体に及ぼす影響は殆どないという言い方もありますが, 人体への影響は放射線の種類などで違いますから正確ではありません.

でも, 少しは安心して戴けると思い書きました.

最後に, 数字に惑わされないで下さい.

今の基準は大変, 安全サイドに設定されていますから, 数字よりも, 信頼できる機関が管理したものかどうかを確かめ, 安心して楽しく食べたり飲んだりして下さい.


2. 燃料と放射性物質の種類と振る舞い (2011/03/24)

福島原発の事故により, 空気中の放射能や野菜, 牛乳, 水などに含まれる放射性物質が検出されています.

これらはキセノン, クリプトン, よう素, セシウム などと呼ばれていますが, これらの害を知るにはその振る舞いを理解しておかねばなりません.

また, 3 号機ではプルトニウムを混ぜた MOX 燃料が使われているため, 災害が大きくなって大変危険であるといった, 世情を煽るような記事も見受けられます.

そのため, 今話題とされている燃料の種類と核反応で生成する放射性物質と, それらの挙動について簡単に説明します.

1) ウラン燃料と MOX 燃料

天然ウランには, ウラン 235 とウラン 238 が 0.7% と 98% の割合で含まれています. このうち, ウラン 235 を最大 5% (平均 3% 程度) まで濃縮して福島の原子炉で使います.

従って, 残る 97% はウラン 238 ですが, これはウラン 235 が核分裂して生成する中性子を吸収してプルトニウムに変化します.

即ち, ウラン 235 が核反応を起こしながらプルトニウムが生成するのです.

このプルトニウムを使用済燃料から取り出してウラン 235 の代りに使った燃料が MOX 燃料です.

従って, MOX 燃料の大半はウラン 238 のままで, 混ぜるプルトニウムの量もウラン 235 の量よりやや多いですが, ほぼ同じと考えて差し支えありません.

然も, 福島などの計画では, 全部の燃料を MOX にするのではなく, せいぜい 3 割程度です.

このような事から, MOX 燃料を使っても, 燃料や炉心の物理的な現象は殆ど同じです.

ウランとプルトニウムは違う物質なので, その特性は違いますが, その違いはほんの僅かで殆ど同じです. 3 号機の燃料が過熱し易く, 溶融し易くまた放射性ガスを放出し易いなどの情報は全く間違っています.

また, 事故時の挙動ですが, ウラン燃料だけの炉心でも, 前述のとおりプルトニウムガ生成しているので, 始めからプルトニウムを使う MOX 燃料を用いた炉心と同じです.

ウランから生成する放射性物質とプルトニウムから生成する放射性物質は同じで, その生成する割合もほぼ同じですから, 事故時に放出される放射性物質の種類も同じで, その割合にも有意な違いはありません.

2) 放射性物質の種類と振る舞い

放射性物質とは天然にあるウランと核反応で生成する核分裂生成物などの総称ですが, ここでは, 福島原発から放出する核分裂生成物のことを放射性物質と言います.

放射性物質の特性として, 時間とともに他の物質に変化し, いずれ放射能を出さない物質になる事はご存知だと思います.

この物理的な特性とともに, 化学的な特性を理解しておいて下さい.

放射性物質は, 不活性のもの, 揮発性のもの, それに常温で固体のものに大きく分れます.

不活性放射性物質の代表的なものがキセノンやクリプトンで, これらはそのままの状態でガス体として存在します.

従って, 何とも反応せず, 人体に留まる事はないので, 空中にあるキセノンなどからの放射線による影響, 外部被曝だけが問題になります.

でも, 一般人には厳しい結果は生じません.

揮発性の放射性物質の代表的なものがよう素やセシウムで, これらは揮発性で, 水にも溶け易い物質です.

従って, これらは大気中に放出されて化合物の形態で雨粒に混ざり, 降雨で地上に降ってきます.

逆に水に溶け易いので, 野菜などを水で洗うと除かれます.

固体の放射性物質の代表的なものがストロンチウムですが, それ以外にもネプチニウムやテクネチウムなどもあります.

核分裂生成物ではないが, ウランやプルトニウムも固体の放射性物質です. これらは, 化学的には酸素や他の物質と化合して, 酸化物などの形態で存在するので, 揮発性は低く, 水に溶け難く, 放射能は出すが化学的には安定しています.

従って, 事故があってもそれ自身では拡散し難く, 殆どが事故現場に留まり遠くへ拡散することはありません.

3) 放射能を押さえ込むこと

放射性物質はすでに生成していますが, 核反応はしていないので, これ以上増えることはありません.

今ある放射性物質が放出しないようにする事が現在の緊急課題です.

そのためには, 原子炉容器や格納容器の破損がこれ以上進展しないようにする事が第一で, また, 揮発性のよう素などが安定になるように温度を下げる事も重要です.

そのため原子炉や燃料プールに注水しまた放水する努力をしていますが, これは長期間続ける事になります.

現在, 炉心の一部は溶融している可能性があると発表されています.

それでも, 格納容器は多少の損傷はあるかもしれないが, 放射性物質を閉じ込めるために踏ん張っています.

これを支えているのが東京電力と緒機関の現場の方々です.

管理がしっかりなされているので被曝の問題は小さいと思われますが, 爆発や不安に苛まれながら, 使命感から寝るのも惜しんで努力しています.

彼らの無事と原子炉の安定を皆で祈りましょう.

Have a nice day!
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はり・きゅう・マッサージ トミイ
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